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イギリスとは雲泥の差。日本で「孤独・孤立対策推進法」成立も“ぼっち”が減らないワケ=原彰宏

「孤独」は身体の健康にも悪影響

孤独はスティグマ(汚名・恥辱)ではない……孤独を考えるうえでキーワードになってくるのが、この「スティグマ」です。

孤独は、何も恥ずかしいことではありません。病気でもありません。さらに、「孤独・孤立」は、何も高齢者にだけにある言葉ではありません。BBCラジオなどの調査では、16~24歳の若者が、どの年代よりも頻繁に最も強く孤独を感じるという結果だったそうです。

英国では、2020年度からは小中学校のカリキュラムに孤独の学習を組み入れることを決めたとのことです。孤独・孤立の延長線上には、「若者の自殺」という悲劇につながっているようでもあります。

孤独のどこが悪いのか。孤立していても問題ない……そう思われる方もおられるかもしれません。

しかし、孤独と孤立は単に心の問題にとどまらず、どちらも身体の健康にも影響を与えることが分かっています。具体的には認知症、糖尿病、心血管疾患、脳卒中などの発症リスクとなったり、自殺や要介護状態に関連したりするという報告があります。

「孤独」と「孤立」は違う……「孤独」は“寂しい”といった感情で、個人の内面の問題で、ここで政策的な対応をとるのは難しいと思われますが、「孤立」は他者との関係性が乏しいことで、「孤立」は「社会的孤立」とも呼ばれている状態・現象であり、これは社会的役割の見直し等で改善することができます。

若者と高齢者では問題の質が異なる

繰り返しにはなりますが、「孤独」は、寂しいというような主観的な「感情」のことで、「孤立」は、客観的に見て他者とのつながりが少ない「状態」を指します。

孤独を感じている人は孤立していることが多く、孤立している人は孤独を抱えやすいという特徴があります。

若者は孤独を感じやすく、高齢者は孤立しやすい……そういう観点から見れば、若者の孤独感のほうが、闇が深そうですね。

SNSやオンラインツールを使って人とつながることができるにも関わらず、10代や20代の若者の孤独感は非常に高いことがわかっています。

よく言われる承認欲求、つまり“いいね”を必要以上に欲しがる傾向があります。“既読スルー”に落ち込むこともあるでしょう。SNS上での“仲間はずれ”感からくる孤独は、若者にとってはとてもつらいですね。

高齢者と若者の孤独・孤立問題は、かなり質が違っているようにも思えます。

さて、ここまでの「孤独・孤立対策」の英国での動きを捉えながら、我が国の動きを見てみましょう。

日本で「孤独・孤立対策推進法」が成立

「孤独・孤立対策推進法」が5月31日、参院本会議で賛成多数により可決、成立しました。

コロナ禍で深刻化した社会的孤立に悩む人への支援を強化するため、政府内に首相をトップとする対策推進本部をつくることとなります。官民による「地域協議会」の設置を自治体の努力義務とする法案が、2024年4月1日に施行されます。

孤独・孤立の問題は新型コロナウイルス禍で深刻になったとの見方があり、厚生労働省によると、2022年の自殺者数は2万1,000人超と前年比で4%増えたという事実を述べています。

地域協議会で、NPO法人などと地域の実情に応じて支援内容を話し合い、自治体と民間が一体となり対策を進めるとあります。

・支援対象の情報を協議会で共有できる
・情報流出に対する罰則を設ける
・正当な理由がなく情報を漏らした場合は1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金となる

はあ、それで…?基本理念では「当事者の意向に沿って、孤独・孤立から脱却して生活を円滑に営むことを目標とする」と明記しました。コロナ禍以後も継続的に対策を取ることができるようにする。これまで支援の裏付けとなる根拠法がなく、民間団体などが法制定を求めていました。

だから、それで…?自民党は「ひきこもり」が良くないと言っているようです。

Next: 法整備でどう変わる?孤独に対する「社会的処方」とは

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