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大阪万博、海外パビリオン建築申請“ゼロ”で費用肩代わり&労基無視スピード建設を提案?民間パビリオンにも暗雲か=原彰宏

カナダ万博代表と実務者大阪市との意見交換の場で…

「海外パビリオン建設申請ゼロ」に関して、ここまでのことを整理すると…。

・工期がタイト
・資材価格高騰に人手不足
・労働基準法の改正で建設業の時間外労働規制が強化

この流れを理解したうえで、次の記事を読んでみます。

※参考:万博の海外パビリオン準備遅れ、カナダ政府代表が大阪市と意見交換:地域ニュース : 読売新聞(2023年7月15日配信)

この記事の内容は非常に驚くものです。大阪・関西万博に出展するカナダのローリー・ピーターズ政府代表と高橋徹副大阪市長との会話が載っています。カナダ万博代表と、実質的な日本側運営責任者である大阪市との会話です。

万博は、「都市」が運営の責任者となります。実務の責任者ですね。お金は国からもらったりはしますよ。だから万博の前に都市名が付けられます。「ドバイ万博」とか「上海万博」とか「パリ万博」といったぐあいで、今回は「大阪万博」なのです。

意見交換の内容は、資材高騰などで準備の遅れが懸念されている海外パビリオンについてです。

前述の記事をじっくりと読んで欲しいのですが、大まかに記事の内容はこうなっています。

ピーターズ・カナダ政府代表は、パビリオン建設について「予算が限られ、スケジュールもタイトだ」との認識を示したうえで、労働基準法の改正で来年度から建設業の残業時間に罰則付きの上限規制が設けられることについて、「万博の建設では(残業を)例外的に認めるなど、柔軟に対応してほしい」と求めたというのです。

これを受けて、実務責任者の高橋副大阪市長は、「国もしっかり把握している。すばらしいパビリオンが完成するよう可能な限り協力したい」と述べたというのです。

平たく言えば、カナダ側の「労基は無視して残業を強制してでも(パビリオン建設を)完成してくれ」という要求を、大阪市が了承したということですかね。

たしか大阪・関西万博の「サブテーマ」の1つは「Saving Lives(いのちを救う)」でしたよね。労基を無視して残業をし続けて期限内にパビリオンを造ることと、「いのちを救う」ことのバランスは、どう考えればよいのでしょうか。

ロシアが参加させないのも、大阪・関西万博テーマの理念に相容れないからでしたよね…。

『働き方改革』における労働基準法の見直しに関しては、こちらの厚生労働省のホームページをご覧になってください。ページをスクロールしていって、労働時間上限規制スタート時期が業種によって違うことをご確認ください。建設業は、施行日(2019年4月1日)から5年後に適用になると書かれています。それが2024年4月1日になるのです。今話題の、トラックの運転手さんの残業規制による「配送業2024年問題」も、この法律によるものです。

大阪万博の日本館、入札不成立で随意契約に…

大阪・関西万博に政府が出展する「日本館」について岡田直樹万博相は6月27日、建設工事の入札が不成立となり、任意に建設業者を選ぶ随意契約に切り替えると明らかにしました。当初の予定通り2025年2月末までの完成をめざすそうです。

※参考:大阪万博の日本館、入札不成立で随意契約に 万博相「見直しも」:朝日新聞デジタル(2023年6月27日配信)

随意契約は、一般競争入札に比べて競争が働きにくく、建設費が膨らむ可能性があります。

報道によれば…「日本館は鉄骨づくりの地上3階建てで、延べ面積約1万1350平方メートル。ホスト国である日本政府が出展する万博の中核的なパビリオンで、各国の首脳らをもてなす拠点にもなる。従来の計画では6月中旬にも工事を始め、開幕2カ月前の25年2月末までに完成させる予定となっていた」「岡田氏はこの日の閣議後会見で、着工が遅れることについて『工期の短縮で
予定通りの完成に導く』と、完成時期に変更はないと説明。建設費が膨らむ可能性には『(仕様の)見直しもありうべし。そのことによって契約額を抑えるのも可能だ』と述べ、契約後に必要に応じて設計などを見直す考えにも言及した」とあります。

この朝日新聞記事の具体例を見てみましょう。

脚本家の小山薫堂氏がプロデューサーを務めるテーマ館は、予定価格を当初の1.3倍の12.6億円に増やした2回目の入札でも、落札者がいなかったそうです。

3回目となる入札の公募を始め、予定価格は約12億6,000万円で、前回の入札とほぼ同額に据え置く一方、建物の高さを低くするなどし、建設費を圧縮したとのことです。

価格が跳ね上がることも含めて、別の論点が見える例があります。

メディアアーティストの落合陽一氏がプロデューサーを務めるテーマ館の建設工事について、再入札の結果、大和ハウス工業傘下の2社による共同企業体(JV)が、予定価格を2000円下回る約11億8000万円で落札したと発表した。

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落合氏のテーマ館は、昨年10月に募集を締め切った1回目の入札が成立せず、設計を見直して建設費を抑えた上で、予定価格を1.8倍に引き上げて再入札していた。応募は大和ハウス傘下のフジタと大和リースのJVだけだった。

出典:万博「落合陽一」テーマ館建設、JVが落札…予定価格1・8倍に引き上げ、再入札で:地域ニュース : 読売新聞(2023年6月24日配信)

博覧会協会は、発注済みの会場基盤整備工事6件のうち5件で、建設資材などが急激に値上がりした場合に契約額を見直す「スライド条項」を適用したことを明らかにし、工事費は約9億円増の約90億円に膨らむ見通しを発表しています。

Next: 民間パビリオンには政治家に食い込む“お友だち企業”の名前も?

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