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続々閉店「高級食パン」ブームに乗って散ったフランチャイズ店オーナーが開業前に見るべきだった数字=俣野成敏

本部が利益を渡してまでFC加盟店を募る理由

現在、約200店舗ある乃が美のうち、直営店はわずか14店舗のみであり、残りはすべてFC店です。この比率は、かなり偏っています。

そもそもFC(フランチャイズ)制度とは、加盟店がロイヤリティ(対価)を支払う代わりに、本部からビジネスモデルやブランド、看板などを使う権利を貸与してもらえる、というものです。

本部が、市場で自社のブランドを構築し、確固たる地位を築くためには知名度がなければならず、そのためにも多くの店舗が必要です。

しかし出店には多額の費用が必要なうえに、市場を占拠するにはスピードも重要です。

顧客が殺到するビジネスは当然、他社の研究対象となるため、一度“儲かる商売”だと世間に認識されれば、すぐ他社に真似されてしまいます。

よって、自分たちの資金やパワーが不足していると考えられる場合は、FC加盟店を募り、他社の資金力をも使って、一気に市場を取りに行く必要があります。

これが、本部がFC店を募集する本来の目的なのです。

本部は、他社に出店してもらう代わりに、自分たちのノウハウと利益を渡さなければならないわけですから、元来、FC店はなるべく少ないほうがいいはずです。

ところが乃が美の場合は、直営店がほとんどありません。これは、本部が店舗を増やす理由が「市場を取るため」ではなかった可能性があります。

本部がお店を出していないということは、それだけ出資も少なくて済んでいることになります。自分たちは、FC店からの加盟金やロイヤリティで元は取れているでしょうから、採算が合わなければ、手仕舞いをするのも比較的容易です。

一方、FC店は商売が上手くいかない限り、出資金を回収できません。それどころか、ロイヤリティを取られ続けてマイナスが膨らんでいく状態になります。

最初から、それを狙っていたのかどうかは定かではありませんが、本部にとってはFCの権利を売ること自体がビジネスになっていた可能性があります。

市場で高級食パンブームが起きた結果、FC希望者が殺到して、いつの間にか本業の食品物販よりも、権利商売のほうへと経営がシフトしてしまったのかもしれません。

Next: 直営店とFC店の理想的な比率とは?

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