各国の金融政策が出揃ったが…
このことを踏まえて、先週のビッグイベント「米FOMC」と「日銀金融政策決定会合」があったことを確認しておきましょう。
まずは各国の消費者物価指数(CPI)のおさらいです。
ユーロ圏:8月CPIは5.2%、7月は5.3%。
米国:8月CPIは3.7%、7月3.2%
日本:8月CPIは3.2%、7月は3.3%
英国:8月CPIは6.7%、7月は6.8%
これを踏まえて、各国直近発表の金融政策を見てみましょう。
欧州ECBでは、域内インフレが進行していることから、利上げを行いました。事前には、利上げ停止という観測もありました。欧州政策金利は4.50%になります。
英国の中央銀行にあたるイングランド銀行(BOE)は21日、政策金利を5.25%で据え置くと発表しました。物価高が落ち着き始めたためと報じています。2021年12月の会合から続けてきた利上げは14回で止まりました。英国の消費者物価指数(CPI)のピークの2022年10月に前年同月比11.1%でしたが、その後は徐々に下がり、今年8月は6.7%でした。やはり市場では、利上げを停止するとの観測が広がってはいました。英国のインフレ率は、主要7カ国(G7)の中で最も高いままです。今後の物価動向など次第では、追加の利上げが検討される可能性もありそうです。
米連邦準備制度理事会(FRB)は20日、政策金利の据え置きを決めています。米国の政策金利は5.50%です。FOMCが公表した四半期経済予測では年内1回の追加利上げの可能性が示され、来年以降の金利見通しが切り上がりました。米利上げ停止は、大方の予想通りでした。
日本の金融政策だけが大型緩和政策継続
そんな中で、日本の政策金利は「-0.1%」です。
日銀に対しては、一部の投資家の間では「マイナス金利解除」が囁かれていましたが、結果は、「マイナス金利解除」の機運を完全に打ち消しました。
日米欧英各国とも、目標とするインフレ率は「2.00%」です。
欧米英はこの目標を上から下げてくる感じ。日本はこの目標を下から押し上げる感じ。押し上げることはないですが「2.00%」になるまでは金融緩和は継続されるということです。
日本の金利は上がることはない……。
いやむしろ“上げられない”のでしょう。なにせ日本人の多くの人は住宅ローンを抱えていますし、国債利払いを考えると、そう簡単に金利を上げることはできなさそうですね。
たしかに金利を上げると、景気には悪影響です。借入金利が上がったら、生活困窮を加速することにもなります。株価は下落します。
日本の今の経済の実力からして、はたして、日本の景気は利上げに耐えられるのでしょうか…。
これまで目先の景気浮揚のために、日銀が次々と打ちだした“異次元の”金融政策に、がんじ絡めに縛られているような感じがしますね。
日本の購買力は53年に逆戻り、賃金水準は30年以上も横ばい…
インフレに負けないでいられるのには、物価上昇以上の賃金上昇が見られれば良いのすが、日本では約30年前から賃金水準は変わっていません。
日本の購買力は53年に逆戻りしました。賃金水準は、30年以上も“横ばい”です。
デフレで日本の経済も成長していませんが、唯一上がったのが“直近の物価”なのです。それもエネルギー価格高騰と円安によってです。日本の消費が良くなったからではありません。需要が物価高を呼んだのではありません。コスト高で自然に物価が上がったのです。予期せぬインフレ、最悪です。
日本以外は、経済が成長し賃金も上がっているのです。日本は、経済が成長しなくて、賃金も上がらないのです。
何が違うのか…。
ようは、賃金が上がればある程度のことは解決できるはずなのですが、そうならないのは、いまの労働環境、雇用構造によるものなのではないでしょうか…。
賃金が上がらないのは経団連が悪いとか、大企業が悪いとか、政府が悪いとか言っている間は何も変わりません。
確かに企業の内部留保金は膨れ上がってはいます。しかし、それを放出して賃金にまわしたところで、それだけで、持続的な賃金上昇につながるのでしょうか…。
そんなものは”その場しのぎ”です。