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日本円の購買力「1ドル360円」時代に逆戻り…なぜ“安い国”に成り下がった?再び先進国に返り咲く道はあるか=原彰宏

日本だけが30年もの間、給料が上がっていない

円安加速で輸出企業の業績が見直され、日経平均株価は大きく上昇しました。円の実力が弱くなって喜んでいるのも、どうかとは思っていましたけどね。

実質実効為替レート低迷の背景には、名目ベースの円安に加えて、物価や賃金が諸外国に比べ低い伸びを続けてきたこともあります。

日本だけが30年もの間、給料が上がっていないのです。「円安」がやたら印象的に見えますが、ずっと日本は“成長してこなかった”のです。

“異次元”から“正常化”に向かう……たしかに金融政策は、いつかはこういう流れになるのは当然ですけれど、そのタイミングがむずかしそうです。ようは、今の日本の経済や景気の状況、社会構造を鑑みて“利上げができない”という結果に落ち着くのですね。

もう一度、”事実”をおさらいしておきます。

・日本のインフレ率は、他国と比べて圧倒的に低いわけではないのに政策金利はマイナス
・日本の賃金の伸びは成長率や生産性の低さを背景に米欧を大きく下回る

8月の米民間部門の平均時給は前年同月比4.3%増。日本は春闘で約30年ぶりの大幅賃上げが実現したとはいえ、一般労働者の所定内給与(7月の毎月勤労統計)は1.9%増どまりです。

こんな状況で日本でよく暴動が起きないものだと、世界の人々から感心されています。

日本の円安は、単に金融政策の違いだけでなく、「貿易収支の赤字拡大」や「円買い圧力に直結
しない第1次所得収支(※注1)の黒字」、それに「デジタルなどを中心としたサービス
収支赤字」など“明らかに構造的な要素”があると、専門家は指摘しています。

※注1:
第一次所得収支 対外金融債権・債務から生じる利子・配当金等の収支状況を示す。
 (第一次所得収支の主な項目)
 直接投資収益:親会社と子会社との間の配当金・利子等の受取・支払
 証券投資収益:株式配当金及び債券利子の受取・支払
 その他投資収益:貸付・借入、預金等に係る利子の受取・支払

出典:用語の解説 – 財務省

旧統計における「所得収支」が、「第1次所得収支」に名称変更されました。

総合的に判断して、何十年も日本経済は成長してこなくて、賃金も先進国唯一上がっていない状況で、なおかつ構造的要素で円安が止められないこんな国に、誰が投資するのですかね…。

日本株を売り買いしている投資家の6割が外国人

日本に投資資金は流れてこない。ファイナンス目的の短期投資資金が、日本を売ったり買ったりして、利益確定を早めてキャッシングしているのです。

なにせ、日本市場での投資家とは日本投資を行っている投資家の6割以上は外国人投資家ですからね。彼らの懐具合で、彼らのポジションの都合で、日本は売ったり買ったりされているのです。

この状況を冷静に判断すると、とても日本市場は、中長期の投資対象として見ることができないと、私は以前から主張しています。

確定拠出年金での運用で、日本株式のセクターを選択しないのも、こういう理由からです。

Next: どこまでガラパゴスを貫くのか?日本の金融政策だけ大型緩和政策継続

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