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日本円の購買力「1ドル360円」時代に逆戻り…なぜ“安い国”に成り下がった?再び先進国に返り咲く道はあるか=原彰宏

日本では、労働者は資産じゃなく「コスト」

終身雇用、年功序列、高度成長期での社会構造……労働体型に賃金構造が賃金を「コスト」にしているのです。労働が「資産」になっていないのです。

労働が「コスト」である以上、企業業績が悪化したら、経費削減(リストラ)で賃金削減や早期退職(解雇はできない)に追い込まれるのは必然です。

今の雇用のあり方、雇用の考え方だと、賃金は「コスト」でしかないのです。

日本の賃金が上がらないのはなぜか…。インフレなり経済を取り巻く環境は、日米でまったく同じにも関わらず、米国では賃金が上がって、なぜ日本だけ賃金が上がらないのでしょう。労働環境において、日本と米国、何が違うのでしょう…。

わかりやすいのは「雇用の流動性」です。

日本でもトヨタが終身雇用を諦めたことにより、転職というものが身近なものになってはきました。しかし、人事評価は相変わらず「メンバーシップ型」で、いわゆる「時給単価×労働時間」が給料であり、労働の成果が評価される「ジョブ型」ではないのです。

米国では「何ができるか」が大事で、日本では会社に出社さえすれば給料がもらえるのです。

いったん雇用したら、会社都合では解雇できない「解雇規制」が日本では厳しすぎます。にも関わらず、いったん上げた給料は、会社都合で下げることはできません。これだと、会社側は怖くて雇用できないですし、簡単に給料を上げることはできませんよね。

ここが日米で大きく違うのです。

米国では雇用は「会社との契約」という考えが強く、日本では「会社は家族」と精神面で縛っているんですね。安い賃金でも会社に尽くすのが当たリ前。だって家族なんだから。その代わり、クビにはしないからね…。

さすがにリーマン・ショックにより世界的不況の波に襲われたときは、“会社が存続してこその従業員”ということで、リストラの名の下、給料は下げられ、解雇されるようになりました。初めて会社の都合で“肩たたき”がなされたのです。

給料は安くても良いからクビにしないで……労働組合もそれなりに頑張ったのですが、会社あっての従業員という考えですから、今後景気が悪くなったらリーマンショックのときと同じようなことが起きるかもしれないので、会社業績が良くなっても給料は上げられませんよね。

今の会社をやめさせられたら他に働けるところがない……後述の「リスキリング」はこういったマインドをカバーしようとするものです。

米国では、必要なときに必要な人材を高額賃金で確保します。雇われる側が「スキル」を持って会社に自分を売り込みます。労働市場ですから、市場原理では、人は高い賃金の所へ流れていきますからね。

米国では、その人の生産性が高い賃金を生み出します。日本では、雇ってもらうために安い賃金を労働者側も容認しているのですから、もう仕方がありません。

そりゃ労働者としても、自分を資産と見られないほうが楽です。能力主義への抵抗もあり、自分に自信がなければ、解雇の心配はないですからね。

ジョブ型のように、労働から生まれる成果が評価されるようになれば、自信のない従業員は、雇用は安定しません。日本では、雇用は資産にならないのでしょうかね…。

まだデフレマインドがまん延している

これが日本特有の雇用形態にあり、インフレになっても賃金が上がらない、賃金が上がらないから、インフレになっても販売価格が上がることを受け入れられないマインドにつながるのです。

もう完全に“デフレマインド”。有り体に言えば”負け犬根性””貧すれば鈍す”状態が染み付いているのですかね。

挙句の果ては、成功者を妬み、富を嫌う……根本的に、マインドセットが日米で違い、日本ではどうも、人々が卑屈になっているような気がします。

労働者の成果により給料が上がることよりも、雇用を安定する方を選んだことで、雇用は”コスト”でしかなく、賃金は上がりようがないのです。

企業側も今の制度で選べる”効率的スタイル”を選んでいるだけです。つまり、正規雇用、非正規雇用も、同じ文脈で考えられるのです。企業は収益をあげないと、分配もできませんからね。

企業にとっては株主も大事です。直接融資してくれる株式市場における株主に配当金を支給するのは企業の責務ですからね。

今のままでは、日銀は金利を上げることはできません。それでもいつかは、市場の要請で金利を上げざるをえない局面が来るはずです。その時に、賃金は物価上昇以上に上がっていないと、本当に生活は苦しくなります。

このままだと、今の制度だと、企業も賃金を上げることは上げますが、米国並みのアップ率は難しいでしょう。物価以上に賃金が上がらないのなら、ほかの収入手段を考えなければならないのです。

その方法として、「副業・兼業」であったり、「資産運用」であったり、その必要性が語られているのです。

そのために国が用意したものが、次にあげる「新NISA」と「リスキリング」です。

ようは、自分たちのことは自分たちでなんとかして、そのかわり制度面から応援するから……ということなのです。

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