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なぜラーメン屋は「1000円の壁」を越えられないのか。コスト増の3重苦で倒産続出も、庶民の金銭感覚が変わらないワケ=原彰宏

ラーメン店「大倒産時代」に突入

日本全国にラーメン店は3万軒以上も存在します。中華料理屋やファミレスなども含めるとおよそ20万軒になると言われています。半数以上が全国チェーン店になります。

こんなに膨れ上がったのも、ラーメン業態では「参入障壁が低い」という特徴もあります。

ラーメン店の倒産が大幅に増加した……帝国データバンクの調査結果がそう語っています。

チェーン店のラーメンは、1杯300円~400円台という価格を提示しています。薄利多売の商売とはいえ、これに立ち向かう個人店は、1日どれだけの集客を見込めばよいのでしょうか。

もっとも、倒産要因として「コロナの影響」というのもあります。「三密防止」「不要不急の外出禁止」の影響は、飲食店などの外食産業や観光産業に、大打撃を与えました。

その大打撃は、単なる表現では語れないほど生易しいものではありませんでした。

いったん離れた客足は戻っては来ない……行動制限が解除されたからといって、何もかもが元通りになるというものではありません。

当然、お店側の二極化という問題もありますが、ここで店の実力が試されると言われれば、その通りではあります。

ただ、営業自粛の間の給付金で家賃や人件費を賄っていたお店は、給付が途絶えた瞬間に立ち行かなくなり、行動規制解除を待たずに倒産してしまったお店はたくさんあります。

コロナ対策の外食産業や観光業への対策は、果たして正解だったのか、そもそもパンデミック初動のコロナ対策がきちんとできていれば、もっと短期間で、社会をもとの状態に戻せたのではなかったのかという疑問は残り続けます。

“キャッチーな言葉”だと自負しているであろう「三密」「不要不急」という言葉が、完全に、世の中の商売、商行為を殺してしまったのも事実です。

この流れの先に物価高があり、人手不足があり、世の中の賃上げの大合唱があるのです。

そりゃあ、お店側も“たまったもんじゃない”でしょうね。

消費者の行動変容に期待

一方で、かつてのリーマン・ショック後の消費マインドとは、いまは少し変わってきています。

・良いものにはお金を払う
・モノができる“プロセス”にお金を払う(コト消費、物語消費)

ラーメン1杯の「物語」に価値を見出しているようでもあります。

お椀の中のスープが奏でるハーモニーとか、こだわった食材に価値を求めているところがあり、ラーメンにかける店主の思いに「10,000円以上」の価値を見出す風潮も垣間見られます。

ようは、消費者側が、完全に「二極化」しているのですね。今どきの言葉を使えば「分断」「格差」になるのでしょうか。

「ラーメン1,000円の壁」は今の日本の象徴かも

プロサッカー選手の本田圭佑さんが、自身のX(旧Twitter)で以下を発言して話題になりました。

イギリスから一時帰国している人が、日本のラーメン屋さんのメニューを見て「よくこの値段で従業員に給料払えるね」と感心していました。

イギリスでは、スーパーなどで買う野菜は、値が上がったとは言えアップを抑えますが、加工されたもの、つまり人の手がかかった料理は、かなり高い値段をつけているそうです。

そうなのです。提供された料理には、人の手がかかっているのです。それまで培った料理の腕がかかっているのです。

貧すれば鈍す……なんか今の日本には、この言葉がまん延しているような気がして仕方がありませんね。

Next: 高い?安い?ラーメンに適正価格など存在しない

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