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ヤクルト中国法人、従業員を1年で2割削減。“処理水”の影響よりも深刻な中国国内の景気減退…回復を見込み値上げを敢行も売上本数激減の裏目に

ヤクルト本社が、中国にある現地法人「中国ヤクルト」の従業員を、ここ1年で2割程度削減していたことが判明した。

報道によれば、販売不振などに伴う措置だということで、会社側が有期契約を更新しなかったり、従業員が自己都合で退職したりなどの理由で、令和5年末の従業員数は4年末に比べ約800人減ったという。

中国では、東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出が始まった昨年8月以降、日本産品の購入を控える動きが目立っているとのこと。その影響もあって中国事業は不振に陥っているといい、そのことも理由にヤクルト本社は昨年11月、24年3月期連結決算の業績予想を下方修正している。

昨年1月の“値上げ”で販売本数が2割減

中国におけるヤクルト事業は、2002年に広東省広州市においてスタートしたのだが、その後の2004年には、中国本土全体への本格進出を目指して、上海に新たな拠点となる法人を設立。

これが現在の「中国ヤクルト」の前身で、現在ヤクルトは中国国内において「中国ヤクルト」と「広州ヤクルト」という拠点を持ち、そのそれぞれに子会社として、製造工場や販売会社を抱えるといった体制を取っているのだが、今回の“人員削減”は、そんな中国の2大拠点のうちのひとつで起こった出来事ということである。

中国国内においても、人民らの健康への意識の高まりに伴い、ヤクルトの存在は広く受け入れられてきたようで、特に2012年頃には「ダイエットに効果アリ」「顔に塗れば美白やニキビ予防、角質除去などの効果」「4本飲むと豊胸効果が」「パパイヤをヤクルトに浸して食べるとガン予防に」などといった、明らかに胡散臭いといったものも含まれる効能が広く流布。これによりヤクルトは現地で爆発的な人気を呼ぶこととなり、一時は買い占め騒ぎも取沙汰される事態にもなったようだ。

このように中国本土において、かれこれ20年以上の歴史を経てきたヤクルトなのだが、ここに来てまさかの失速といった状況に。その理由としては先述の通り、処理水問題による日本製品の買い控えが影響しての、いわゆる典型的なチャイナリスク……という声もあるのだが、そのいっぽうで中国国内の景気減速もかなり大きいよう。

実際、ヤクルトは中国において乳酸菌飲料「ヤクルト」などの価格を、23年1月に1割ほど値上げしたようだが、それにより中国国内における1日当たり販売本数は約528万本と、前年同期比で約2割減となってしまったということ。原材料高騰分の価格転嫁、さらに同地におけるゼロコロナ政策の解除による消費拡大を期待しての値上げだったようだが、結果的にはそれが裏目に出て売上の低迷に繋がる格好となったようなのだ。

ちなみに、中国以外の海外事業の状況をみてみると、売上本数では中国の2大拠点を合わせた数より多いインドネシアにおいても、2023年1~6月の本数は前期比で89.0%と大きく下降した模様。その反面でメキシコやアメリカといった地域では、中国などと同様に価格改定を実施したものの、販売本数は増加傾向で安定的な成長を遂げているようである。

増収増益でも大幅下落する株価

そんなヤクルトの最近の株価の推移といえば、昨年7月に24年3月期第1四半期の決算が発表され、13%増収・15%増益という好調にも見える結果だったにも関わらず、その直後に株価が10%以上も下落したのが記憶に新しいところ。

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そんなまさかの展開となった原因としては、事前に予測されていたほどの増収増益ではなかった点、さらに近年爆発的な売上を誇っていた「ヤクルト1000」「Y1000」の人気にやや陰りが見えた……といったことも挙げられていたのだが、それらとともに取沙汰されていたのが、やはり中国事業の不振だった。

中国事業の不振による株価の下落といえば、最近だと化粧品メーカーの「資生堂」が“処理水問題”の影響で売上が低迷しているということで、株価がストップ安水準の下落となったことが。

【関連】資生堂、頼みの中国事業が“処理水”問題による不振で株価急落。繰り返されるチャイナリスク発動に「経営陣の能力がホタテ漁師同然」との痛烈揶揄も

もっとも資生堂に関しては、いまや日本国内よりも中国市場のほうが売上高が多いため、それが不振となれば株価が敏感に反応するのは当然といったところだが、対するヤクルトはというと、こちらは日本国内での売上が約半分と圧倒的で、中国を含むアジア・オセアニアの売上は26.1%(24年3月期第2四半期)。それでも両社ともに株価下落ということで、“中国市場の不振”という要素は、市場ではとにかく悪印象となってしまう傾向のようなのだ。

それだけに、ヤクルトとしても中国市場の立て直しは急務ということで、これまでの大型店舗を中心にした展開を改め、小回りの利く中小規模の営業拠点をつくり、中小型店舗への開拓・納品をきめ細かく行う、さらにECチャネルをこれまで以上に強化していくといった取り組みを始めているよう。とはいえ取り組みの内容からしても、その成果が現れるのはしばらく先のこととなりそうで、当分は苦境が続くのは避けられないといった情勢だ。

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