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日銀「マイナス金利解除」で日本は長い苦難の道へ…政府・企業・私たちの生活はどう変わるか=岩崎博充

国民(個人):金利は上昇してもせいぜい1%前後、心配なのは金利高による円安?

国民に対する影響は、よく指摘されるのが「住宅ローン金利」の高騰によるものだが、結論から言うと金利の高騰といった心配はあまりいらないのではないか。というのも、日銀が金利のある世界にシフトさせたからと言って、将来の金利水準が欧米のように4~5%に上昇するわけではないからだ。仮にそこまで金利を上昇させたら、日銀も、政府も、企業も大変なことになってしまう。日本経済が成り立たなくなってしまう可能性が高い。

住宅ローンは固定金利と変動金利では大きな差が出るとはいえ、植田日銀総裁も住宅ローン金利については「大幅に上昇するとはみていない」と参院財政金融委員会で述べており、短期金利は上昇したとしても「0.1%程度にとどまる」と述べている。これまで指摘してきたことでもわかるが、マイナス金利が解除できても、日銀・政府・企業への影響が大きすぎて、とても金利をどんどん上げていくような環境ではない、ということだ。実際に、変動型住宅ローンの金利は現在0.3%程度だが、融資期間1年以内の「短期プライムレート(現在は1.475%)」が上昇しなければ、影響はないと言われている。

個人が唯一、金融正常化によって恩恵を得られる可能性のあるものは、預金金利の上昇だが、こちらも短期プライムレートなどが上昇してこないと当面はわずかな恩恵しかないはずだ。

ちなみに、NISAの投資対象となる株式市場や海外の資産に投資する投資信託などは、海外の金融マーケットに影響を受けやすく、日銀の金融正常化の影響はあまり大きくない。ドル円相場も、変動幅は大きくなるものの、大きく円高に振れる可能性は低く、むしろ円安に対して警戒心を持ったほうがいいのかもしれない。

結局、国民が心配しなければならないのは、万一政府がデフォルト(債務不履行)に陥ったり、日銀が債務超過となって日銀券(円)の価値が低下すること。簡単に言えば円安によるインフレの心配をしたほうがいい。

このところ株式市場や金価格、ビットコインなどが史上最高値を更新しているが、世界中の投資家が際限なく発行できる法定通貨よりも、株・金・暗号通貨といった限りある資産を選択している証だろう。

image by: Leonid Andronov / Shutterstock.com
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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2024年4月1日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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