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日銀「マイナス金利解除」で日本は長い苦難の道へ…政府・企業・私たちの生活はどう変わるか=岩崎博充

日本政府:金利上昇で膨れ上がる国債利払い、円安との戦いも?

日銀以上に大きな影響を受けるのが政府だ。

おそらく政府ほど、日銀の大規模緩和政策の恩恵を受けてきたところはないはずだ。ここ10年ほどの間は、好き勝手に国債を発行してもそのほとんどを日銀が購入してくれ、しかもほとんどただ同然の格安金利で発行が可能となり、ピーク時は年間で170兆円もの国債を発行できてきた。

さらに2024年度の国債発行総額の計画案では「181兆4,956億円」(財務省)となっている。そのうち、新規国債発行額は34兆9,490億円になるという。2024年度予算では、歳出費の総額は「112兆717億円」、そのうち国債費は「27兆90億円」となり歳出の4分の1程度は使っていることになる。

しかし、今後は違ってくる。内閣府の試算によると、今後長期金利の上昇は2033年度には「3.4%」まで上がり、政府の国債の歳出のうち利払い費だけで「22.6兆円」にも膨らむ見通しになっている。23年度が「7.6兆円」であることを考えると、この10年で3倍に膨れ上がることになる。10年後には、政府の歳入の半分程度を国債の償還や利払い、要するに「借金の返済」に充てなければならないかもしれない。

日本経済が順調に成長を遂げて税収が増えない限り、日銀に依存したままの状況は今後も続くことになりそうだ。

さらに、日銀が金利のある世界に復帰したことで、今後は海外の投資家などが金利の引き上げを催促する金融相場になる可能性も高い。為替市場では、米国のFRBが利下げに踏み切れば、日米の金利差が縮小してくることになる。一時的には円高に振れるものの、その状態がしばらく続けば、市場はまた日銀の利上げを要求して、円安に振れてくる。しばらくは、こうした状態が続くことになり、政府(財務省)と日銀は、行き過ぎた円安に振り回される可能性が高い。

企業:6社に1社?「ゾンビ企業」の大清算が実施される?

10年以上に渡って続いてきた日銀の金融緩和政策によって、大きな影響を受けるもののひとつに「ゾンビ企業」がある。超低金利のおかげで、本来であれば倒産していた企業が、日本には大量に残っている。日本の労働生産性がG7の中で最も低いレベルになっているのも、こうした生産性の低いゾンビ企業が数多く残っているからだ。

ゾンビ企業というのは、国際決済銀行(BIS)の定義では「3年連続でインタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)が1未満、かつ設立10年以上の企業」とされている。簡単に言えば、利益や利息よりも借金の利息などのほうが多い「稼ぎの低い企業」のことで、こうしたゾンビ企業が日本には25万1,000社(2023年11月末現在、帝国データバンク調べ)もあり、全企業の6分の1を占めているそうだ。

日本の大手銀行は、これまでこうしたゾンビ企業への融資を控えていたのだが、コロナ禍に実施された政府系金融機関による実質無利子・無担保による「ゼロゼロ融資」を受けて生き残ってきた。

日本の労働人口の6割を雇用していると言われる中小企業が、金利引き上げによってバタバタと倒産していく時代がやってくるかもしれないわけだ。さらに、大手企業でも有利子負債などが多い企業や業種は、今後難しい経営を強いられる可能性がある。

企業倒産が増えると、これまではその原因の如何に関わらず、大型補正予算を組んで企業倒産を助けてきたのだが、今後はそう簡単には予算も組めなくなる。

現在も行われている物価高対策としての様々な補助金行政も、今後はどんどん減らされていくことになるはずだ。日銀の金融政策正常化に伴って、政府に依存して企業は今後、容赦なく経営破綻させられていくことになる。また、そうならなければ金融正常化の出口戦略は失敗に終わることになる。

Next: 私たちの生活や投資環境はどうなる?小さくないマイナス金利解除の余波

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