「グローバリズム」の危険な狙い
グローバリズムの目的は、単純に「利益」です。個々人の利益になるからこそ、政府に規制緩和、自由貿易、構造改革を求めるのです。
グローバリズムが緊縮財政を好むのは、「国の借金で破綻する~っ!」と、キャンペーンを展開し、国民に財政破綻論がインプットされれば、「政府の支出・予算のカット」が容易になるためです。もっとも、政府の支出や予算をカットしたとしても、公共サービスや社会保障は提供され続けなければなりませんし、最低限のインフラも必要です。
というわけで、「ならば、我々にお任せを。民間活力を導入しましょう」と、“彼ら”が登場し、公共サービスが「ビジネス」と化していくわけでございます。
水道といった基本インフラを含む、公共インフラはコンセッション方式で民営化。社会保障はカットし、民間ビジネスである年金、保険へ切り替え。新たな診療については保険適用せず(医療亡国!とか叫び)、自由診療を拡大。公務員も削減し、代わりに派遣会社が行政サービスを提供。全ては、同じ「スキーム」に基づき推進されます。
具体的には、「我々が儲けるには、どのように政府の規制緩和を推進すればいいのか?」でございますね。もっとも、上記の類の規制緩和、構造改革は、後に法律を制定することで「元に戻す」ことが可能です(論理的には)。
例えば、韓国はソウルの地下鉄9号線を民営化し、外資系(マッコリー・インフラ)に売却しました。ひどい話ですが、地下鉄9号線の年平均事業収益率は8.9%に設定され、収益率が下回った場合はソウル市から補填を受ける契約になっていたのです。すなわち、収益保証条項です。
現実には、収益率が8.9%に達することはなく、ソウル市はマッコリーに毎年、数十億円の補償金を支払わざるを得ませんでした。その後、マッコリーのやり方に批判が殺到し、2013年に収益保証条項は破棄されました。「利益にならない」ことが判明した時点で、マッコリーはあっさりとソウルの地下鉄事業から撤退してしまいます。
民営化された公共サービスを「受注」した株式会社(外資含む)は、利益にならないとなれば、即座に事業から手を引きます。何しろ、彼らの目的は利益であり、他にはないのです。
あるいは、南米の一部の国のように、「水道民営化」を法律で禁止するといった対抗措置を、政府側がとることも可能です。公共サービスの民営化等には、取り返しがつく可能性が残されているのです。
「移民問題」は取り返しがつかない
ところが、「移民問題」はそうはいきません。日本を含む現代の先進国が、外国移民を母国に「強制送還」などとやることは、よほど事態が切迫したとしても無理でしょう。
日本でいえば、「人権!」「人権!」とうるさい連中が騒ぎだし、「可哀想」といった感情論で国民世論を煽り、移民送還を妨害しようとするに決まっています。その場合、政治家にとって移民の強制送還は「政治リスク」になってしまうわけです。自らが票を失うリスクを受け入れた上で、移民送還を進められる政治家は、大変残念なことに、我が国では皆無に近いでしょう。
だからこそ、「今、入れない」という選択しかないのです。ところが、現実の日本は今や「世界第5位の移民受入大国」と化しています。
まずは、安倍政権が移民受入政権であることを認識する。その上で、安倍政権に対し「移民を入れるな!」と声を出していくことが重要です。さもなければ、我が国は普通に「移民国家」と化すことになるでしょう。
繰り返しますが、移民問題は取り返しがつかないのです。
『三橋貴明の「新」経世済民新聞』2017年3月26日・27日号より
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