世論調査が間違えた理由
米国のメディアは、このサイレント・マジョリティの怒りをうまく分析できなかったのではないか、と思います。さらに言えば、米国メディアそのものもエスタブリッシュメントの一員なので、サイレント・マジョリティの怒りに鈍感だったともいえます。
殆どのメディアが選挙の終盤に反トランプのキャンペーンを繰り広げても、点で効果がなかった理由もここにあります。サイレント・マジョリティの怒りはメディアにも向けられていたのです。
グローバル化の流れは止まるか?
基本的な構造は英国のEU離脱でも同じです。EUに加盟し、英国は国全体としては潤いましたが、一方で東欧諸国から英国へより良い賃金を求めて移民が急増しました。
とくに08年のリーマン危機後に雇用低迷が深刻になると、低賃金で働く移民が英国人の雇用を奪っているとの不満が蓄積し、域内のヒトの移動の自由を基本理念に掲げるEUへの懐疑論に火を付けました。ここでもやはり中間層が経済的に没落していきました。
さて、トランプ氏の主張を聞いていると、総体的には「アンチ・グローバリズム」のようにみえます。
失われたアメリカの雇用を回復させるため、TPPを始めとする自由貿易には反対。輸入品には高率関税をかける、余りにも世界の情勢に干渉し過ぎた事から来る米国の疲弊に歯止めをかけるために諸外国に米軍駐留費を全額負担するよう求める等々、グローバル化からの決別を訴えているようです。
アンチ・グローバリズムは日本でも始まっている
筆者の見るところ、このアンチ・グローバリズムはすでに日本でも始まっています。
企業活動としてのグローバリズムは、大量生産、大量販売、市場は全世界ですが、日本では少し前から「地産地消」を合言葉に日本全国に販路は広げず、その地方独自のアイデンティティを大事にする、という流れが出てきています。
これからは「アンチ・グローバリズム」が経済を読み解くキーワードとなるような気がします。