米国民は「世界の平和」よりも「自国の豊かさ」を選んだ
トランプ大統領の誕生がもたらした影響は、とてつもなく大きい。日本にとっても、ロシアや中国にとっても、今回の米国大統領選は深刻な影響をもたらしそうだ。ポピュリズム的な手法で勝利をもぎ取った英国のブレグジット(EU離脱)や、フィリピンのドゥテルテ大統領が勝利したのとはわけが違う。
これまで、米国は自国の利益のためには、世界中の様々な秩序を強引に変更してきた。ちょっと前までは世界最強の軍事力にものを言わせて、様々な場面で口を出し、軍隊も派兵してきた。ただ、残念ながらベトナム戦争では軍事的に敗北し、イラク派兵では勝利したものの、結果的にタリバンやIS(イスラム国)といった過激なテロ集団を誕生させてしまった。
トランプの主張する「America First(米国第一主義)」は、これまで世界に君臨してきたリーダーの座を勝手に降りることを意味している。
駐留米軍の負担増や日米安保条約の見直しもほのめかしているトランプの主張は、ある意味で米国の孤立化を意味し、世界の秩序はあっという間に崩壊していくことが予想される。
ロシアは、旧ソ連の東欧や中欧諸国に介入し、再びソ連邦の勢力を取り戻そうとするかもしれない。中国は、東シナ海や南沙諸島に対して、今まで以上に自国の領土アピールをしてくるはずだ。
世界中の国が、これまではある程度米国に頼ってきた自国防衛のコストを負担しなければならなくなり、経済的にも大きなダメージを受けることになる。
日本では、米軍が撤退したら、日本の消費税は17.5%になるというシミュレーションがすでに出ている。