今週は10/10(火)に衆議院選挙が公示され、本格的な選挙戦に入ります。報道の多くも選挙関連となるでしょう。ただ、新党希望の立ち上がり、民進党の実質解散、立憲民主党の創設などを経て、最終結果がどうなるかは、見通しにくいところです(自公が過半数を確保し、安倍政権継続とは予想していますが)。このため、選挙は、国内株価の買い材料とも売り材料ともなりにくいでしょう。(『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』)
※本記事は有料メルマガ『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』2017年10月8日号の一部抜粋です。毎週いち早く馬渕氏の解説をご覧いただくには、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。市場急変時には号外の配信もあります。
馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」2017/10/8より
過ぎし花~先週(10/2~10/6)の世界経済・市場を振り返って
<米国株価は、経済指標の堅調さと減税案進展期待で上昇したが…>
(まとめ)
先週は、週末前まで米国株価が続伸し、日本株の押し上げ材料ともなりました。これは、先週発表された米国の経済指標に強いものが多かったことや、下院で予算決議が可決されたため、減税案が原案通り進展するのではないかとの期待が広がったことが挙げられます。しかし米ドルは今週も、対円で113円を超えては落ちるという相場付きの繰り返しにとどまりました。
週末金曜日発表の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比で減少しましたが、これはハリケーンの影響が大きく、米国の経済実態を推し測るうえでは、悲観視する必要は薄いと考えます。ただし、その日の米国株価が引け前は概ね安く推移したのは、雇用統計によるものではなく、株価上昇の息切れが生じており、その口実として雇用統計が使われたと解釈しています。
(詳細)
先週はこれまでと同様の地合いが継続し、木曜日(10/5)まで米国株価が続伸しました。米国株価が堅調だった理由としては、まず米国の経済指標に強いものが多かったことが挙げられます。
そうした経済指標とは、具体的には、10/2(月)発表のISM製造業指数(8月の58.8から9月は60.8に上昇)、10/4(水)発表の同非製造業指数(同じく55.3から59.8に上昇)、10/5(木)発表の新規失業保険申請件数(27.2万件から直近週は26.0万件に改善)でした。
ただし、ISM製造業指数については、確かに強いのですが、過去は60を少し超えるとピークを打った(たとえば1987年12月の61.0や2004年5月の61.4がピーク)ので、足元ももうすぐピークを打つのではないかという声もあります。
もう1つ、米国株価が上昇した背景としては、10/5(木)に、米議会下院で予算決議が可決されたこともありました。予算決議については、後述する「盛りの花」もご覧ください。
こうした米国株の堅調な推移は日本株の支持材料ともなり、日経平均株価は、10/6(金)には一時19700円を超える局面もありました。
ただし、日本株の相場付きとしては、米国株価が堅調な割には10/5(木)は日経平均株価は足踏みしましたし、先週の東証マザーズ指数は崩れてしまっています。NT倍率(日経平均÷TOPIX)もリバウンドしており、どうも日経平均ばかりが持ち上げられている感が強いです。
これは、日本株全体に息切れ感が広がっているが、海外投機筋が日経平均先物を買い戻しているためだと推察しています。
買い戻しの理由としては、
- 森友・加計問題が取りざたされて内閣支持率が低下した際は、日本の政治情勢について懸念を抱いた。しかし、総選挙の情勢をみると、現与党が過半数を維持して安倍政権が継続する可能性が高いように思われる
- 最近、北朝鮮が静かだ
という点が挙げられます。そうした背景を踏まえると、先週の日本株は、日経平均をみると強いように見えますが、実態は脆弱であるように思います。
また、米ドル円相場については、先々週と同様、113円を超えては割り込むといった頭が重い展開が繰り返されました。
さて、週末(10/6、金)には、9月分の米雇用統計が発表され、注目される非農業部門雇用者数は、前月比で3.3万人減少しました。こうした落ち込みは予想以上ではありましたが、前号の当メールマガジンで述べたように、ハリケーンの影響が大きいと考えられます。失業率は8月の4.4%から4.2%に低下しており、米国の雇用情勢自体は堅調だと解釈してよいでしょう。
この日、米国の主要な株価指数は、雇用統計を受けてザラ場では総じて前日比マイナス圏で推移し、引けになってほぼ前日引けの水準まで何とか持ち直しました。
総じて株価が安かったことについては、非農業部門雇用者数が減少したからとの解説が多いですが、そうではなく、このところの米国株価の上昇が企業収益と比べても行き過ぎであり、いずれ株価は息切れするのが自然だが、雇用統計発表というイベントが終わったことが投資家の売りの口実になった、と考えています。すなわち、雇用統計の結果がどのようなものであっても、週末の米国株価は頭が重い展開となったのではないでしょうか。
週末金曜日の米ドル円相場の動きについても、失業率の低下を反映して米ドルは上昇したが、北朝鮮が近いうちにまたミサイル発射を行なうとの観測報道から、米ドルが反落した、と言われています。しかしこれも同様に、そもそも米ドルの上昇が無理な局面となっており、北朝鮮絡みの話があろうとなかろうと米ドルは反落したのではないか、と考えます。
ここで、先週の主要な株価指数の騰落率ランキング(現地通貨ベース)をみてみましょう。
騰落率ベスト10は、
- ベネズエラ
- ペルー
- 香港
- 南アフリカ
- アルゼンチン
- チリ
- モロッコ
- ブラジル
- シンガポール
- 英国
でした。新興諸国に優勢なものが目立ちます。
ワースト10は、
- パキスタン
- スペイン
- イタリア
- ギリシャ
- ポルトガル
- アイルランド
- ロシア
- メキシコ
- エジプト
- インドネシア(ただしインドネシア株の騰落率はごくわずかプラス)
でした。欧州主要国が多く含まれています。10月1日にスペインのカタルーニャ自治州で、独立を問う住民投票が行われ、それを受けて、スペイン株やスペイン債が大きく売られたものの、当初は欧州他国の株価は平静に推移していました。ただ、投票結果を受けて、独立宣言を進めようとするカタルーニャ自治州と、スペイン中央政府との対立が深刻化していることから、じわじわと欧州他国の株価も軟調に転じ始めました。
外貨の対円相場のランキングでは、騰落率ベスト10は、
- チリペソ
- アイスランドクローナ
- イスラエルシェケル
- スウェーデンクローナ
- ブラジルレアル
- ミャンマーチャット
- 米ドル
- 中国元
- 韓国ウォン
- ベトナムドン
でした。主要通貨の中では、米ドルがしっかりした推移をみせました。
ワースト10は、
- 英ポンド
- メキシコペソ
- ニュージーランドドル
- 南アランド
- トルコリラ
- ハンガリーフォリント
- 豪ドル
- スイスフラン
- ロシアルーブル
- ポーランドズロチ
でした。資源価格の一服を受けて、資源国通貨が軟調でした。また、英国のメイ首相が辞任するとの観測が流れ、英ポンドの足を引っ張りました。