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杞憂に終わる「ダウ暴落」イエレン利上げで米国株式市場が死なない理由=江守哲

東京株式市場~上値追いには材料不足

日本株はようやく上昇し始めました。日経平均はとうとう19500円を明確に抜けてきました。先週初めまではこの水準を行ったり来たりで、結局は重かったのですが、ひとまず安心できる状況といえます。

最大の材料は円安です。円安で輸出企業の収益拡大期待が広がったことが、買いを誘ったのだと思います。

しかし、そのドル円も後述するように、少しやりすぎ感があります。

そして、米雇用統計を受けても上値を試す動きにはなっていません。ピークを付けたとすれば、ここからの上昇は別の材料が必要ということになります。

期待できない日銀金融政策決定会合

日銀の金融政策決定会合では、新しい話は出てこないでしょう。

現状でさらに市場を刺激するような政策は打ち出せません。むしろ、今後のインフレ懸念に対して市場金利が上昇した場合、日銀がどのように対処するかがポイントになります。

すぐに国債買い入れの操作を変更することはないと思います。しかし、世界の市場金利が上昇していく中で、日本だけが人為的に抑えられなくなった時に、どうするのかは知っておきたいところです。

この点はいずれ黒田総裁も対応を迫られることになります。すぐにではないでしょうが、今後の方針をできるだけ早めに浸透させる作業は必要でしょう。

地銀がこの半年間の債券投資でかなり傷んでいる模様です。実態調査が行われるとの報道もありました。

昨年11月の米大統領選直前まで、日本の地銀はこれまでの日本国債の低金利による収益性の低さを嫌気して、思い切って大量の外債投資に踏み切りました。

世界的に金利が最も低い時期です。つまり、国債価格が最も高い時に投資をしたわけです。

結果的に、トランプ氏の勝利でドル金利が急伸し、1%以上も上昇したことから、地銀の米国債のポートフォリオは大きく傷むことになりました。

まさに高値掴みです。それにしても、これまであまりやっていなかったことを、苦し紛れに行うとこのような結果になるということです。結果的に、投げるしかなく、それがさらに金利上昇を招いたと考えられます。

このような動きが止まれば、今度は金利の上昇が限定的になる可能性もあります。そうなると、米国債の利回りが意外に上昇せず、ドル高にもなりにくいという話になります。

結果的にドル円は円安にはならず、これが日本株を圧迫するということも十分に出てくるわけです。

下がらないが、上がりもしない日本株

日銀がETF買いを通じて下値を支えていますので、そう簡単には下げません。紙幣をいくらでも印刷できるので、株にしても国債にしても、無尽蔵に買うことができます。

モラルの問題があることは承知ですが、物理的にできてしまうという現実があります。この現実には逆らわない方がよいでしょう。

しかし、これが日本株の上昇を促すというのはまた違うと思います。

下がらないだけで、上がりません。健全な下げがない相場には買いが入らず、結果的に上値もないということになります。この点では、日銀のETF買いは非常に歪んだ市場構造を作り出していることだけは間違いありません。

このような状況ですから、日経平均株価の上昇は限定的です。したがって、個別株で動きの良いものや新興株への資金シフトが起きるのは当然ともいえます。

Next: 日経平均株価、当面の上値メドは19850円。真の復活にはほど遠く

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