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米朝首脳会談「開催」濃厚へ。なぜトランプは世界を揺さぶり続けるのか?=江守哲

仲介する「韓国」の苦悩

さて、これに困ったのが韓国の文在寅大統領です。

脱北者の子どもである文在寅大統領は、これまで韓国統一に向けて努力を続けてきました。しかし、今回の米朝首脳会談取りやめ騒動を受けて、外交・安保担当閣僚らを緊急招集しました。

また、北朝鮮は24日、北東部・豊渓里の核実験場の坑道や観測施設を爆破し、廃棄作業を実施しました。朝鮮中央通信によると、北朝鮮の核兵器研究所は「核実験の中止を、透明性をもって保証するため、核実験場を完全に廃棄する式典を行った」と発表しました。

しかし、この実験後にトランプ大統領が会談を取りやめたことで、朝鮮半島情勢をめぐる融和ムードが消え、北朝鮮はトランプ政権による「最大限の圧力」が再び高まることに警戒を強めるとみられています。

したがって、再び文在寅大統領は仲介役となるでしょう。

後ろで「中国」が糸を操っている?

米国は、北朝鮮が「ほほ笑み外交」から一転して強硬姿勢に転じた背景には、中国の存在があるとみています。

専門家は「北朝鮮が中国という後ろ盾を得たことで、交渉のパワーバランスが変化した」と分析し、中国の介入で北朝鮮情勢が一層複雑になったとの見方を示しています。

さらに、トランプ政権も「金委員長が2度目の訪中を終えた後、態度に変化があった」とし、トランプ大統領も中国の習近平国家主席を「友人」と呼びつつも、「北朝鮮を裏で操っているのではないか」と疑いの目を向けていました。

金委員長は今月7・8日に中国遼寧省大連を訪問し、習主席と2度目の会談を行いました。16日には朝鮮中央通信が米韓による合同軍事演習を「軍事的挑発」と非難し、米朝首脳会談の取りやめを示唆しました。

トランプ大統領が中国の関与を疑う理由は、金委員長が姿勢を転換したタイミングだけではありません。

中国はこれまでにも在韓米軍や米韓軍事演習に対する警戒感を示しており、北朝鮮を通じて演習中止を求めた可能性は否定できないというわけです。

一方、文在寅大統領は「朝鮮半島の非核化や恒久的な平和は、断念も先送りもできない歴史的な課題だ。問題の解決に向けて努力してきた当事者の真意に変わりはない」と強調しました。

さらに、「今の意思疎通のやり方では、敏感で難しい外交問題を解決するのは難しい」と指摘し、「米朝の首脳間のより直接的で緊密な対話で解決していくことを期待する」として、首脳会談の必要性を訴えています。

いずれにしても、まだシンガポールでの中止は準備自体が中止になったとの報告は来ていません。ぎりぎりまで、北朝鮮が心変わりをするのを待つのかも知れません。北朝鮮の出方次第では、開催の可能性と話し合いの進展が進む可能性があります(※編注:原稿執筆時点:2018年5月26日)。

そのように米国が仕掛けています

表面上は米国が主導権を握っているようにみえますが、最終的な判断はすべて北朝鮮次第です。まだまだ揺さぶりがありそうです。まだまだ混乱は続くことになりそうです。

Next: 日本もようやく半島問題に関与できる体制へ

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