やがて「3人に1人」が高齢者に
そのうえ、前述したように、日本の人口は減少するだけでなく急速に高齢化していきます。
2000年以降、就業年齢に達した日本の労働者の数は13%減少しましたが、米国では逆に13%程度増加しているのです。
恐ろしいことに、2040年までに日本人の3人に1人以上が65歳以上になります。これは世界レベルで見ても、ダントツに高い比率です。
もっとも、この試算は、フィナンシャル・タイムズの研究によって導き出されたもので、日本の厚生労働省の公式発表では、「2030年の高齢化率は30.8%と、2030年には国民の3人に1人が65歳以上になる」とされています。
今、2025年問題が囁かれていますが、これは、団塊の世代が75歳を超えて後期高齢者になる年で、要介護認定を受ける高齢者が急増すると予想されている年でもあります。
介護に携わる労働者の待遇改善の遅れが、構造的な人手不足を生み出し、また火葬場などの施設も圧倒的に不足することが分かっています。
さらに、2025年には、1,200万人以上の高齢者が認知症になっていると推計されており、国の医療介護福祉改革が焦眉の急(非常に差し迫った危険、問題を抱えていることのたとえ)となっています。
日本の経済停滞は避けられない
しかし、国は抜本的な改革をそっちのけにして、ひたすら憲法改正に突っ走っています。
仮に、労働意欲の旺盛な高齢者が再雇用されたとしても、高齢者の労働生産性の低下がGDPの足を引っ張るだけでなく、年金の崩壊や国民皆保険制度の崩壊など、さまざまな将来不安に備えて消費を控えます。つまり就労している高齢者の人口が多いからといって、消費の後押しとなることは期待薄です。
若い労働力が、ますます不足していく中で、百歩譲って「仮に、今後、労働生産性が横ばいであっても、日本の人口減少が年々、GDPを押し下げていくことは打ち消しようがない」と前出のロブ・カーネルは言います。
結論は容易に導き出すことができます。それは「拡大する人口を持つ国のGDPはプラス成長を続け、反対に人口が減少していく国のGDPは、今後、マイナス成長が続く」ということです。
教育水準が高い日本の今後に、世界が注目している
ただし、日本人のように全体的に教育水準が高く、高いスキルを持っている国民を見る場合に重要なことは、「1人当たりのGDPがどう推移していくかである」とカーネルは言います。
過去20年を労働生産性で比較した場合、“失われた30年”と言われながらも、日本人1人当たりのGDPは、フランスやカナダとほぼ同じです。
また、高齢化の傾向と人口減少を考慮しても、労働者1人当たりGDP成長率をみると、日本は、“失われた30年”の間でさえも、G7の中ではドイツに次ぐ第2位の躍進です。
この尺度を用いれば、日本の優秀な労働力は、今後も人口1人当たりGDPは、年平均で2%以上の成長率を維持することが見込まれます。
しかし、そのいっぽうで、若い労働力が減り続け、反対に、高齢化が加速度的に進むので、総体的には、年間1%ずつGDPが押し下げられていくということになるのです。