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ロシアのシリア空爆で明らかになった「米軍によるイスラム国支援」

思いのほかシリア国民の支持が高い「アサド政権」

ところでロシアは、「アサド政権」を支援し、政権の崩壊を防ぐ意志をはっきりさせており、「イスラム国」のみならずすべての反政府勢力を攻撃の対象としている。

これは「アサド政権」の打倒を目標にしているアメリカには絶対に許すことのできない暴挙として映る。

このため欧米のメディアでは、国民を残虐に抑圧する独裁政権の「アサド政権」こそ「イスラム国」のようなイスラム原理主義勢力が拡大した原因であり、国民の支持を完全に失った「アサド政権」の打倒こそ急務であるとのキャンペーンを展開している。

ところが、「アサド政権」の国民の支持率が思っても見ないほど高い事実が次第に明らかになってきた。シリアで民主化要求運動が続いていた2012年、カタール政府は世論調査機関と契約し、「アサド政権」の支持率を調査した。2012年の支持率は55%であった。

そして2015年、9月に英大手の世論調査機関『ギャロップ』が調査したところ、圧倒的に多数のシリア国民がアメリカこそ「イスラム国」を支援する敵であると認識している事実が明らかになった。

以下が調査の結果である。数字はイエスと答えた人々の割合だ。

  • 「イスラム国」はアメリカと外国が支援して作った組織である。82%
  • 外国人勢力の介入は内戦を悪化させた。79%
  • 国の分裂には反対だ。70%
  • シリア人は分裂を乗り越えて一緒に暮らすことができる。65%
  • 外交的な解決策はある。64%
  • 状況は悪化している。57%
  • 政治的な解決策がもっともよい。51%
  • アメリカが主導する空爆には反対だ。49%
  • 「イスラム国」はよい影響を及ぼしている。22%
  • アサド政権下の生活よりも現在のほうがよい。21%

この調査には「アサド政権」の支持率に関する質問はないが、「アサド政権下の生活よりも現在のほうがよい」と答えているシリア国民は21%しかいないので、圧倒的に多数のシリア国民が「アサド政権」を支持していると見て間違いないだろう。

ロシアが「アサド政権」を支えるために空爆に踏み切った背景には、シリア国民のこうした支持率の高さがあるようだ。もし「アサド政権」が国民の支持がほとんどない独裁政権であったのなら、これを支援するロシアの空爆は国民の強い反発を招き、内戦を悪化させる結果になる。

こうした状況は、勢力の拡大を狙う「イスラム国」などのイスラム原理主義テロ組織にとってはかっこうの状況になるはずだ。おそらくロシアはこうした状況も踏まえ、軍事介入に踏み切ったのだろう――

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ロシア地上軍の本格的な介入はあるのか?

ロシア軍の派遣を要請するイラク政府

第2のアフガンとなることを警告するアメリカ

「数百名の中国軍の軍事アドバイザーがシリアへ」中国軍の動き

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未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』(2015年10月9日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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