「資産差し押え」に日本が対抗
韓国の強制徴用被害者が3月7日、三菱重工業の資産に対して差し押さえ申請しました。これをきっかけに日韓関係は、重大な危機を迎えました。
韓国政府は、文大統領の直接指示によって、この問題に介入しない方針を決めています。日本政府が、強硬手段に訴えればそのままにして、国内を反日に向けさせる。これによって、来年の国会議員選挙で与党有利にさせる狙いと見られます。韓国経済が失速状態になり、政権批判の声を反日で鎮める戦略でしょう。文氏の頭には、日韓関係改善意識は絶無です。
菅義偉官房長官は8日の記者会見で、「そうしたこと(注:差し押え申請)が進んでいることは極めて深刻な状況だ」と発言しました。しかし、韓国政府が何らの対策もとらなければ、日本政府は、「自国民の安全や資産を保護する責務がある」という視点から行動に出ざるを得ません。
日本政府は9日、韓国人元徴用工訴訟の原告側が差し押さえ済みの日本企業の資産を売却した場合、企業に実害が生じたと見なし、対抗措置を発動する方針を固めたようです。
『時事通信 電子版』(3月10付け)が報じました。対抗措置の内容を要約します。
- 韓国産の一部物品に対する関税の引き上げを軸に検討している
- 日本政府は対抗措置として既に100前後の選択肢をリストアップしている
- 関税引き上げに加え、一部日本製品の供給停止や、ビザ(査証)の発給制限も浮上している
- 世界貿易機関(WTO)協定との整合性や日本経済への影響も考慮し、措置の内容を決める
韓国政府は、この問題で種々の対応策を検討していると繰り返しましたが、前述の通り文大統領が、韓国が対応策を取ることを禁じた結果、ついに来るところまで来た感じです。
韓国で資産差し押え手続きが始った以上、近々、日韓関係に激震が走ります。この激震は、韓国経済を揺るがす騒ぎに発展するでしょう。
半導体輸出は急激に落ち込み
韓国の今年の経済は、すでに八方塞がりの状況です。
先ず、輸出が振るいません。世界経済が下降局面に向かっています。半導体輸出は価格下落が響いて、利益率の圧縮が起こっています。1月の世界半導体市場は30カ月ぶりに前年水準を割り込みました。主要半導体メーカーで構成する「世界半導体市場統計」(WSTS)によると、1月の世界売上高(3カ月移動平均)は前年同月比5.7%減でした。20%を上回る高成長が続いていた半導体市場は、2018年後半に減速。今年1月、ついにマイナス圏に入ったのです。韓国もこの状況から抜け出られません。
半導体不況はいつ底入れするのか。韓国の半導体業界関係者は、「5Gが普及すれば世界でやりとりされるデータ総量は現在の2倍になる」と指摘、中長期でみれば市場の成長は間違いないと話しています。問題は、その「5G」(次世代通信網)がいつ軌道に乗るかですが、「23年の通信市場に占める5Gの比率は35%」と4年も先の話をしているほど。つまり、ここ2~3年の半導体市場の回復は望み薄です。韓国の輸出額の20%が半導体です。韓国経済には痛手です。
昨年10月から、韓国景気は後退局面に入っています。韓国政府が正式に認定していないだけの話で、正式発表待ちの段階です。
輸出がダメならば内需はどうか。内需は昨年4~9月までGDPへの寄与率でマイナスでした。10~12月期は、財政支出が下支えしてプラスに転じましたが、今年の1~3月期は再びマイナス寄与、つまりGDP成長率の足を引っ張る形になるでしょう。
内需がマイナス寄与である理由は、最低賃金の大幅引き上げが理由です。韓国の最賃法は罰則を伴います。経営者は罰金を科されるのを避けるべく、やむなく従業員の解雇に踏み切っています。最低賃金法の目的は、底辺労働者を保護することにあります。韓国では、最賃法が底辺労働者を解雇させる「悪法」になっています。目的は立派でも、やり過ぎは逆効果を生みます。薬と同じで過剰摂取は不健康の原因になります。
半導体輸出が落ち込むことになれば、利益率は大幅に圧縮されるので、設備投資にも悪影響を与えます。こうして輸出不振が内需に負の影響を与えることは不可避です。
こうなると。今年のGDP成長率はかなりの低下を見込まざるを得ません。世界的な格付け会社のS&Pは、2.1%成長という厳しい線です。私も、かねてから2%スレスレを予想している所です。昨年のGDPは2.7%成長でした。