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サンバイオショックとは何だったのか?大損失を被った2名の事例と得られる教訓=俣野成敏

【サンバイオ社の復活なるか?】

以来、サンバイオ社の株価は、かつての高値水準には戻らず、2,000円台〜3,000円台をウロウロしていましたが、ここへきて動きがありました。

まず、同社の薬(SB623)が厚生労働省から再生医療等製品として先駆け審査指定制度の対象品目に指定されました。これは初期の治験段階で、その有用性が見込まれた医薬品に対して、優先的に審査する制度です。これが好材料となって、株価が上昇しました。

続いて4月11日に、同社と業務提携をしている大日本住友製薬株式会社(東証一部)が、中期経営計画の中で、SB623を「開発方針検討中」と発表したことから、株が買われました。

昨年11月末の治験失敗の発表以来、大日本住友製薬から資金を打ち切られるのではないか、との憶測が、サンバイオ株の下落圧力になっていました。しかしコメントが「検討中」に留まったことから、開発は継続される、と判断されたようです。

さらに、17日にはテレビの経済番組で取り上げられたこともあって、翌日の同社の株はストップ高となったのです。

現状では、サンバイオ社の復活を思わせる展開となっていますが、本当にこれで「めでたし、めでたし」なのでしょうか? どうして、まるでジェットコースターのように、株価が上がったり下がったりを繰り返すのでしょうか?

またまた激しく上下する? 東証マザーズ市場の難しさ

実は、サンバイオ社が上場している東証マザーズという株式市場は、東京証券取引所に開設されている、主に新興企業向けの市場です。

この市場の特徴としては、東証一部、二部などの市場に比べると上場基準がゆるく、成長性を重視し、条件をクリアできれば赤字でも上場できる、という点が挙げられます。

もともと1999年に開設された東証マザーズは、規模が小さく、たとえば東証一部と比べても、上場企業数で約7.7倍、時価総額に至っては100倍以上の差があります(日本取引所グループHP、2019年1月末の数字で比較)。

小さい市場を見る際に、気をつけなければならないのが、この“規模感”です。市場全体が小さく、上場している会社の発行株式も少ない場合、それだけ1取引が市場に与える影響が大きくなります。

市場が小さいということは、取引自体が少なく、流動性に欠けるため、少しの変動でも投資家心理を煽りやすくなります。取引が偏りがちで、価格が乱高下を繰り返します。

確かに、東証マザーズには「次世代の企業を育成する」という、大きな役割があります。しかし、私たちのように(プロの投資家ではない)兼業投資家にしてみれば、マザーズは参入するのが非常に難しい市場です。

東証マザーズは、公の取引所とはいえ、ハイリスク・ハイリターンの市場なのです。

2. ホワイト案件に潜む危険性

サンバイオ社は、上場した2015年は利益が出ていたものの、その後の4年間はずっと赤字で、売上も伸びていません。従業員は8名で、アメリカの子会社を含めても32名という、典型的なベンチャー企業です(日経新聞電子版、同社のHPより)。

このような小さな会社が、これだけ社会にインパクトを与えられる、というのが新興市場の面白さでもあり、難しさでもあるのでしょう。

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