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サンバイオショックとは何だったのか?大損失を被った2名の事例と得られる教訓=俣野成敏

ほとんどの情報はサンバイオ社から提供されている

もう1つ気になるのが、情報がほぼ一方通行になっている点です。つまり、ほとんどの情報がサンバイオ社から提供されている、ということです。

臨床試験のメインがアメリカのため、「実際のところはどうなのか?」という情報がつかみにくく、日本でも臨床試験は行われているようですが、現場からの声はあまり聞かれません。

厚生労働省から、先駆け審査指定制度の対象品目として、同薬が指定されたのは確かです。

しかし、その背景をお話しすると、再生医療品の製品化に関して日本は出遅れており、上市されている医薬製品の数が、2012年12月の時点でアメリカ9品、韓国14品に対して日本はわずか2品であり、2017年でも日本は4品でした(日本薬理誌151、2018「創薬研究の新潮流20」)。

こうした現状に危機感を抱いた厚労省が、開発を早めるために、先駆け審査指定制度を導入した、という経緯があります。

これに加えて、国際共同臨床試験での取り決めによって、通常は第1〜第3まで臨床試験を行うところを、SB623は、日本では第2相臨床試験のみで認可が下りる可能性があります。

「遅れを取り戻したい」という国の思惑と、開発側の「早く発売して、会社の成長に弾みをつけたい」という思いが交錯して、少し急ぎすぎているような感じがしなくもありません。

誤解のないようにお伝えしておくと、当メルマガはサンバイオ社を非難するものではありません。同社が将来有望な企業であることは重々承知していますし、ぜひとも夢の薬の開発に向けて、頑張っていただきたいと考えています。

自分の限られた資金をどこに投じるべきなのか?

彼らが生き残りを賭けて、必死にプレゼンテーションを行うのは、ある意味、当然のことです。製薬開発にはお金がかかり、国などがもっと積極的に後押しをしていく必要があるのも事実です。

けれども、それと私たちが「自分の限られた資金をどこに投じるべきなのか?」ということとは、分けて考えるべきなのではないでしょうか。

今回のサンバイオショックは、
・株式市場に上場し、トップに位置している企業
・証券会社を通して、正当な市場に参加している
…という安心感が、一般投資家をリスキーな行動に走らせてしまったようにも思います。

まっとうな市場で、企業自体にも問題がなくても、投資にはこのような落とし穴があるのです。

Next: 投資の目的は資金を殖やすこと。サンバイオショックから得られる教訓とは

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