最悪シナリオの実害は遅れてやってくる
米中貿易戦争の次の焦点は、市場が想定していた「最悪の事態」が世界の貿易など世界経済に実際に「最悪の事態」をもたらすか否かに移っていきそうだ。
市場が想定する「最悪の事態」が起きることと、それが実際に世界経済などに「最悪の事態」をもたらすということはイコールではないからだ。この半年間金融市場の主役でもあった米中貿易戦争は、一旦主役の座から降りることになりそうだ。
米中貿易戦争がすでに「最悪の事態」にまで達して事態が動きにくくなったことに加え、FRBの金融政策もしばらくは動き難い状況にある。
金融市場における最大のファンダメンタルズである金融政策と、最大のリスク要因である「政治的リスク」が動かない可能性が高いということは、市場が方向性をもって動き出す可能性も下がっているということである。
こうしたことに加え、市場ポジションの大きな歪みもないとしたら、市場は一旦凪状態に向かう可能性が高い。次にマーケット要因としてテクニカル的リスクは、市場全体が凪状態を常態だと誤解することだ。ただし、それには少し時間が必要だ。
日本のGDPはまさかのプラス
そうした中、久しぶりに注目されるのは、いろいろな動きが出る可能性が高い日本である。
ここにきてにわかに脚光を浴びてきているのが、消費増税先送り問題である。13日に景気先行指数による機械的な景気判断が6年ぶりに「悪化」に引き下げられたことも、こうした見方に強める要因になっている。
そうした中で注目されたのが週明けに発表された1-3月期のGDPである。市場予想は若干のマイナス予想であり、マイナス成長が▲2%に達したら消費増税先送りの可能性が高まるという見方が強まっていた。
しかし、結果は年率2.1%増と市場予想をはるかに上回る結果となった。公共投資と住宅投資が経済を支える一方、個人消費は▲0.1%減少(前期比)とマイナス成長となるなど内容的にはイマイチといえる内容となった。
注目されるのは外需(純輸出)のGDP寄与度が0.4%となったところ。詳細を見ると、輸出が2.4%減だったのに対して輸入が4.6%減となり、輸入の大きな減少が純輸出を押し上げた格好になっている。
輸出の減少は米中貿易戦争による影響が表れた結果だといえるが、輸出に含まれる訪日外国人数が前年同期比で5.7%伸びていることを考えると、米中貿易戦争の影響は見た目よりも大きくなっているといえる。
その一方、TPP11や欧州EPAなどの追い風がある中で輸入が4.6%減となったことは個人消費がマイナス成長であったことと整合性のとれるものであり、個人消費が予想以上に弱いことを示唆するものである。