トランプ大統領によるファーウェイをターゲットとした輸出禁止措置は、米中冷戦開幕の狼煙でした。60年以上前に起きたスプートニク・ショックを彷彿とさせます。(『藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』藤井まり子)
※本記事は有料メルマガ『藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』2019年5月28日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。
中国を抑えて5GとAIでサイバー空間を制したいアメリカ
ファーウェイへの輸出禁止措置は、米中新冷戦開幕の狼煙(のろし)
「米中の新冷戦」の「開幕の狼煙(のろし)」が高々と打ち上げられました!
その「狼煙(のろし)」とは、5月15日のトランプ政権による「ファーウェイなどの中国企業をターゲットとした輸出禁止措置」の発動です。
ファーウェイは、言わずと知れた「次世代通信技術:5G」分野では、アメリカを追い越して世界の最先端を走る大企業です。まずは手始めに、このファーウェイにトランプ政権は照準を当てました。
遅かれ早かれトランプ政権は、AI関連の中国企業をバッシングし始めることでしょう。
「米中貿易戦争」は、「のどかな貿易戦争」の枠組みを大きく飛び越えて、ヒステリックな「ハイテク分野での米中の覇権争い」に発展しています。
これは、知的財産権の問題に留まらず、国家安全保障の問題に発展しているのです。すなわち、「サイバー空間・宇宙空間での米中の軍事的な覇権争い」に発展しているのです。
この「輸出禁止措置」を受け、ファーウェイとの取引を自主的に停止する動きがアメリカ企業を中心に広がっています。グーグル、クアラコム、そしてイギリス・アーム社などがそれです。多くの西側の企業がグーグルの後に続くことでしょう。
ファーウェイは「グーグルのOS:アンドロイド」を使えなくなりました。これは、ファーウェイにとっては死活問題です。
グーグルの「OS:アンドロイド」を使えなくなれば、携帯はただの「なんの役にも立たない、半導体チップのゴミ箱」です。グーグル検索、グーグルマップ、グーグルプレーなどなどの、様々な西側のアプリケーションが使えなくなるからです。
目下のところ、ファーウェイは「独自のOSを開発中だ」と強がっています。が、グーグルのアンドロイ・レベルのOSをすぐに開発することは不可能でしょう。ファーウェイは今後全力で独自のOSを開発してゆくことでしょうが、ファーウェイ製の携帯で使えるアプリは「中国製のアプリ」だけに限られることになります。
さらにさらに、OSだけではありません。
イギリス・アーム社(ソフトバンクの子会社)は、携帯向け半導体チップの設計図(設計情報)を担う会社です。このアーム社の設計情報がなければ、携帯向けの半導体チップは製造できません。そのアーム社も、今後はファーウェイとの取引を中止しました。
アーム社の設計図を使用できなくなれば、ファーウェイの子会社であるハイシリコンは、半導体チップそのものを製造出来なくなります。
アンドロイドを掲載しない携帯は、ただの「半導体チップのゴミ箱」なのに、そのゴミ箱に入れる半導体チップさえも、ファーウェイは製造できなくなるのです。
今後、ファーウェイはソフトの面でもハードの面でも携帯や通信事業で、甚大な被害を被ることになります。
ファーウェイはもはや当面は携帯を製造できなくなるかもしれないのです。
アメリカという国は、本当に、「絶対に敵に回したくない」恐ろしい国です…。
「次世代通信技術:5G」でアメリカを大きくリードしていたファーウェイ。そのファーウェイは、アメリカをリードしていたからこそ、照準を当てられてしまったのです。
ファーウェイは、破綻の危機に追い込まれるかもしれません。北京政府が乗り出して、ファーウェイを一時的に保護してなんとか生き延びられたとしても、ファーウェイの技術開発は大きく足踏みをしてしまうことでしょう。
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