物価指数の問題
ところが、総務省の全国消費者物価(5月分)上昇率は0.7%に留まり、変動の大きい生鮮食品を除いた「コア」で0.8%、さらにエネルギーも除いた「コアコア」で0.5%と、いずれも政府日銀の物価目標2%を大きく下回っています。
消費者の実感と統計が示す物価上昇とで大きな乖離があります。
この両者の乖離についてはいくつかの要因が考えられます。消費者が日ごろ目にする物価と全体の差や、総務省の統計把握、処理の問題などです。
<消費者は食料品で物価上昇を実感する>
まず、消費者が日ごろからスーパーなどで目にしている食料品などの中には、価格上昇が大きいものが多く、パソコンなど何年に1度しか買わないものが「値下がり」している点があります。
例えば、毎日のように目にするパンは5月に前年比1.9%の上昇となり、店頭の牛乳は4.1%の上昇となっています。
逆に、パソコンの価格は物価指数上は20年で50分の1になって、物価指数を押し下げています。デジカメや電子レンジも大幅な下げになっていますが、これらは普段目にしません。頻繁に買うものがより大きく上昇しています。
<価格そのままで量が減る…統計上の問題も>
これとは別に、統計調査上の問題、統計処理上の問題もあり、これらが実態以上に物価上昇を低く見せている面があります。
例えば、パンの値段は1年で1.9%の上昇となっていますが、パンの大きさが明らかに小さくなっているものが多く、これらは実質値上げになります。実感としてのパンの値段は10%以上は上がっています。
同様に牛乳は4.1%上昇ですが、昨年1,000cc入りだったものが900ccに減りました。これは実質10%の値上げに相当します。ジュースの入れ物も小さくなって値段は変わりません。チーズは2.4%下落となっていますが、スライスチーズは10枚入りが7枚に減ったと言います。
これらは「ステルス値上げ」ですが、指数では反映されていないようです。