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しまむら、客離れ加速で業績悪化。ユニクロを目指して主婦に嫌われる大失策=栫井駿介

「裏地あったかパンツ」の成功がもたらしたもの

しまむらはこのプライベートブランドで「プチバブル」を経験しています。

2017年2月期は「裏地あったかパンツ」が大ヒットし、過去最高業績を達成する原動力となりました。これに気を良くして、売り場でもプライベートブランドの拡充を図ったと思われます。

プライベートブランドは、小売業にとっておいしいものとなっています。自社で一貫して開発や製造をおこないますから、中間コストが省けて高い利益率を達成できるのです。大手スーパーやコンビニでもよく見られるようになりました。

同業のユニクロはその最たる例で、全ての商品がプライベートブランドです。ここまでくると「製造小売業」(SPA)と呼ばれます。

しまむらも「ユニクロ型」を目指したのでしょう。裏地あったかパンツに続くヒット商品をと、次々にプライベートブランドを投入しました。

私も数ヶ月前に店舗を訪れましたが、どの棚へ行ってもプライベートブランドがアピールされている印象を受けました。

しかし、私は結局何も買わずに店を出てしまいました。どこか「思っていたのと違う」印象を受けたのです。この違和感が、現在の業績不振の要因になっているように感じます。

何が違うのか。それは顧客がしまむらに求めるものです。

顧客がしまむらに求めるもの

しまむらと言えば、本来「数多くの種類の商品が手頃な値段で並んでいる」場所です。様々な(ほとんど無名の)メーカーの商品が並べられ、この中から自分のお気に入りの商品を見つける「宝探し」のような感覚がありました。

これが主婦層の心に絶妙にマッチしたのだと思います。主婦は価格に厳しい一方で、女性として他人と「被る」のを嫌います。私の妻もそうです。だから、安易にユニクロで統一することを敬遠します。

そこで、しまむらを活用することで「ユニバレ」(ユニクロがばれること)や「被り」を回避できたのです。しまむらの商品は買ったお店を特定することが困難ですし、数多くの種類の中から選ぶので被りはほとんどありません。

すなわち、顧客がしまむらに求めるものはこの「宝探し感」にあったのです。それを、事業的には細かな在庫管理や物流コストの削減で安く提供していたのです。

しかし、当のしまむらはその「強み」を認識していなかった可能性があります。

売り場をプライベートブランドで固めたら、他の商品は目立たなくなり、種類も減少してしまいます。すると「宝探し感」がなくなってしまうばかりか、「ユニバレ」ならぬ「シマバレ」が発生してしまいます

顧客はしまむらで買いたいわけではありません。ユニクロでは買いたくない人が、その代替策としてしまむらを利用しているのです。そこで明らかにしまむらとわかるプライベートブランドをメインに売ってしまったら、もはや誰も買いたがる人はいないでしょう。

つまり、しまむらはプライベートブランドによって自らその強みを消してしまったのです。目の前の利益を追求してしまったがために、本当に大切なものを失ってしまったように見えます。

Next: マネして大失敗…?ユニクロも最初からうまくいったわけではない

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