複雑なコーポレートストラクチャーと株主名簿
最後に少しだけWeWorkのコーポレートストラクチャーと株主名簿を見ておきたいと思います。
コーポレートストラクチャーはここにあるように非常に複雑な構造になっています。今回上場するWeCoと呼ばれる会社は持株会社であり、その下にリースを提供する会社と不動産開拓・獲得を行う右側のARKと呼ばれるグループの2つがぶら下がる形になっています。
このARKと呼ばれる会社グループはWeCoが80%を所有し、残りの20%は外部のLPが投資家として参入する形になっています。
不動産開拓のための資金を自前で調達しきれないので、このように外部の投資家を入れて不動産調達の資金調達の柔軟性を上げているものと考えられます。
最後に株主名簿を見ておきましょう。
これを見ると、最も株式数が保有株式数が多いのがソフトバンクグループということになりますが、続いてほぼ同数をウィーホールディングスと呼ばれる創業者等の資産管理会社がを有していることになります。
それ以外にはベンチマークキャピタルやJPモルガンが大株主になっています。余談になりますが、ここ数年間のベンチマークキャピタルのパフォーマンスはとてもすごいものがあると言えるのではないでしょうか。
WeWorkにおいても最近のシリコンバレーのIPOでよく見られるように、デュアルクラスの普通株が投入されています。
クラスAの普通株は一株当たり議決権が一つ、クラスBそしてクラスCの普通株は一株当たり議決権が20個あることになります。
創業者のアダム氏が、上場から10年後以内に$1B(約1,000億円)に相当する金額を寄付しなかった場合はクラスBそしてクラスCの議決権は一株当たり20個ではなく10個に減るという記載がありました。
なぜこのような記載があるのか、理由まではわかりませんでしたがとても面白い試みだと思います。
以上、今回の記事ではWeWorkの赤字の原因を詳しく見てみました。これだけ見ると、単純に成長のスピードが速すぎて新規物件の開拓契約工事にお金がかかっているだけという風にも見えますが、次の記事ではまたもう少し深掘りして、ユニットエコノミクスまで見て行きたいと思います。
※本記事は有料メルマガ『決算が読めるようになるノート』2019年8月27日号の抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
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『決算が読めるようになるノート』 2019年8月27日号『Q. WeWorkの赤字が巨大なのは何故か?』より抜粋
※記事タイトル・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部による
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