リスクをリターンがカバーできない
その弊害の一端とも言えますが、銀行などの金融機関が、従来なら手を出さないようなリスク商品に手を出すようになりました。
スルガ銀行の無謀な不動産融資への傾斜が問題視されましたが、国内銀行のこの10年間の貸出増の約7割が不動産向け、住宅ローンです。大手銀行も米国での「レバレッジド・ローン」つまり、信用格付けがダブルB以下の低い信用力の企業向け融資を積極的に拡大しています。
さらに、これらの「危ない先への貸し出し」債権を証券化した「ローン担保証券(CLO)」への投資も急増しています。農林中央金庫や三菱IFJなど、大手だけでも10兆円も保有しています。
かつてのサブプライム危機時に問題になった、資産担保証券の暴落が頭をよぎります。当時は住宅価格の下落が危機の引き金となりましたが、今日では景気の悪化で企業が返済不能となった時に危機が露呈します。
また信金・信組など中小企業金融機関の運用資産内訳をみると、株や投資信託などのリスク資産の割合が、10年前には全体の4%程度でしたが、足元では18%に高まっています。
金利の得られる運用資産が減っている分、こうしたリスク資産保有に傾斜せざるを得なくなっています。
こうしたリスクとリターンは通常厳密に計算されて管理されるのですが、優秀な人材が少なくなると、これらの管理が甘くなり、リスクに見合ったリターンが得られないケースが指摘されるようになりました(日銀金融システムレポートより)。
それだけ、金融市場が不安定化したときの金融機関の体力が低下していることになり、危機にはもろくなります。
サービス低下で「銀行離れ」
また運用利回りの低下にともない、経費の削減が求められますが、すでに有人店舗数が大幅に減り、「街の身近な銀行」が姿を消し、店舗での事務手続きが必要な場合、電車に乗って銀行まで行かねばならなくなりました。ATMの数も減りつつあります。
一部にはネットバンキングにより、店舗もATMも不要になりますが、ネット取引になじまない客には、大きなサービスの低下になっています。
マイナス金利政策を進めても、日本では一般預金金利をマイナスにはできないとの認識が広がっています。
しかし、欧州の一部にはマイナスの預金金利を設定する銀行も現れました。日本ではなじまないとしても、その分、様々な「手数料」で預金者にコストの転嫁がなされようとしています。
口座の管理手数料、通帳発行手数料などがかかると、一気に「銀行離れ」が進むと見られます。