トータルの人件費を下げ続ける企業
とはいえ、日本ではマイナスの「ベア」つまり「ベースダウン」は困難です。従ってここでも正社員の「年功賃金」を見直し、稼げる労働者には「プロフェッショナル」として高い給与を与えます。
その一方で、貢献度の低いその他社員については職制を変えて給与を下げるか、低い給与の子会社、関連会社に出向させ、トータルの正規雇用給与を引き下げることになりそうです。
その分を非正規雇用の給与引き上げ、正規へのシフトによる人件費増にあてることになるでしょう。
非正規雇用にとっては正規雇用に転換することで給与増になりますが、年収179万が504万円になるわけではないと思われます。
落としどころは、179万円と504万円の間で、企業にとって人件費負担が増えない水準となり、企業にとって自由度の高い雇用制度に転換することになると思われます。
「プロフェッショナル」人材には残業代はつかず、成果を挙げなければ、プロフェッショナル職も失うことになります。
制度化は労働者を守るか
結局、定年延長、同一労働・同一賃金を政府が掲げても、その制度の下で労働者が豊かになる保証はありません。
むしろ新しい制度の中で、自由度は企業にあり、企業が全体としての人件費を増やさないような形の「働かせ方」に変えることになります。
70歳まで働く機会は確保されるかもしれませんが、その分、40歳代で本社を離れ、子会社、関連会社に出向させられ、給与水準のピークも40歳代に低下するか、年功賃金カーブがなくなり、年齢階級別にはフラットなカーブとなり、職能給にウエイトが置かれると考えられます。
従って、長く勤めれば給料が上がることはなくなり、転職、中途採用が増え、労働コストはやはり変動費化が進みます。労働者にとっての生涯設計は必ずしも楽にならず、結婚、出産、子育てには厳しい環境が続きます。