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新型肺炎は「オンライン診療」を広めるか? 日本での普及を阻む3つの壁=シバタナオキ

新型肺炎が猛威を振るう中国で「オンライン診療」が注目を浴びています。はたして日本でも普及するのか?広く使われるためには、3つの壁を越える必要があります。(『決算が読めるようになるノート』シバタナオキ)

※本記事は有料メルマガ『決算が読めるようになるノート』2020年3月3日号の抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:シバタ ナオキ
AppGrooves / SearchMan共同創業者。東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻 博士課程修了(工学博士)。元・楽天株式会社執行役員(当時最年少)、元・東京大学工学系研究科助教、元・スタンフォード大学客員研究員。

新型肺炎をきっかけに「オンライン診療」は普及するか?

この記事はKimmyさんとの共同制作です。Kimmyさんは中国語に堪能なので、中国語で書かれた記事やリサーチデータから、まだあまり日本で知られていないワクワクするビジネスや中国で話題のテーマをご紹介くださいます。

今回取り上げる「オンライン診療」は、スマートフォンを利用して、病院の予約・問診・診察・処方・決済までをネット上で行う診察サービスを指します。日本では、「CLINICS」「curon」「ポケットドクター」等のサービスが該当します。

中国の武漢を中心として新型ウイルスの感染が爆発的に広がっている中、オンライン診療がまさに今の医療現場を支えている中国の事例を紹介しつつ、日本でサービスを普及させていくための課題を説明していきます。

注目を浴びる「中国」のオンライン診療

中国では医療のデジタル化が進んでおり、オンライン診療サービスが多く立ち上がっていました。今回、中国のオンライン診療アプリはいち早く新型ウイルス対策に対応し、アプリを通した感染防止指導や、24時間体制でのオンライン無料相談などを市民に提供しています。

ちなみに、以下の画像は10のオンライン診療サービスにおけるアプリ画面です。正しい感染防止方法の解説や、感染状況の情報をリアルタイムで提供しており、市民の混乱や不安を軽減しています。今回のような緊急時における対応のスピード感は、さすがとしか言いようがありません。

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中国オンライン診療サービスの画像出典(中国語)

武漢のケースを見ると、オンライン診療アプリは2つの観点で中国の医療現場に大きく貢献しています。

1つ目が、「院内感染のリスクの低減」です。あらかじめオンライン診療アプリを通じて、病院に行くべき人と行かなくても良い人を選別することで、新たに新型ウイルスに感染する人を出来るだけ抑えることが出来ます。

ちなみに、ウイルス流行の中心地である武漢の大学病院の医師によると、オンラインの問診サービスを受けた人のうち、60~70%は不安と緊張によるもので、未感染であり、30%程度が感染の疑いがあるとされ、肺のCT検査が必要だと診断された人はごくわずかだったそうです。

200303shibatanaoki_2

2つ目が、「現場の医療従事者の負担軽減」です。オンライン診療アプリは、全国の医師と提携してサービスを提供しているため、地理的・空間的な障害が無く、医療現場の負担を抑えることが出来ます。

Alibabaグループ傘下のオンライン診療企業「AliHealth」が、1月24日より提供している無料のオンライン相談の例を挙げると、1月26日時点の地域別アクセスにおいて、累計40万ユーザーのうち97%が湖北省、そのうち64%が武漢に集中していました。
参考:AliHealth オンライン診療ユーザーの地域別アクセス(1/28、中国語)
参考:武漢大学人民医院 インタビュー(2/6、中国語)

ただでさえ混乱に陥っている医療現場にこの人数が駆け込んでしまった場合、想像するのも恐ろしい事態になっていたでしょう。

Next: 「2040年問題」と日本の医療現場

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