バフェットは銀行株を売却。賢人が白旗を上げる理由
さて、目下人々にとって最大の関心事は新型コロナウイルスの影響です。
直近では、大手アパレルメーカーのレナウン<3606>が民事再生法を申請しました。このように企業倒産が増えれば、銀行も損失を免れません。1つの会社が倒産すれば、取引先が資金回収困難になり「連鎖倒産」が起こります。倒産がどこまで拡大するか、決して予断を許しません。
倒産が拡大すれば、銀行もただでは済みません。やっかいなのは、今回に関しては大企業も中小企業も、そして国内も海外も等しくその波に襲われることです。
このような事態は過去に例を見ません。
もちろん、政府は企業倒産を抑えるためにあらゆる策を尽くすでしょう。日銀による資金供給オペが行われていますが、今後政府保証付きの融資や債権の買取なども考えられます。それで国債を発行することになってもやむ無しという雰囲気があります。
ただし、政府支援を増やせば増やすほど、長期的な影響は長引くと考えられます。
政府・日銀は今後10年以上にわたって金利を上げることは難しくなるでしょう。潰れないために借入を増やした企業は、金利を上げられると途端にもたなくなってしまうからです。
しかし、ここでお金をばらまくことは、景気回復時にはインフレリスクをはらむことになります。通常、インフレ時には金利を上げて上昇を抑制するのですが、上記の理由からそれが難しくなってしまうのです。
すると、銀行はインフレで債権価値が実質的に目減りし、一方で金利は上がらないというジレンマに陥ることになります。これはもはや、銀行というビジネスにこだわる限り、企業努力では太刀打ちできない状況です。
ウォーレン・バフェットは、長く保有していた米国の地方銀行株やコールドマン・サックス株を手放しました。金融株を「お気に入り」としていたバフェットが、ここで考えを大きく変えたのです。
先日行われた株主総会では以下のようなことを言っていました。
“結局は購買力が疑わしくなりうる” ―『起こりうるのは通貨への疑念』(フィナンシャル・ポインター)
少なくとも私たちは、この「賢人が銀行株を売った」という事実を軽く捉えるべきではないでしょう。
このように、もともとの低金利環境下で銀行を取り巻く環境は厳しかったところ、新型コロナウイルス禍でますます悪化しているのです。