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リモート後進国に落ちた日本。なぜオンライン診療・オンライン教育が進まない?=原彰宏

コロナ対策での時限措置?

新型コロナに対応し、初診でのオンライン診療を4月から解禁したことで、日本でも導入医療機関が増えているようで、システムを提供するMICIN(マイシン)によると、納入件数が3,200施設に達したとあります。

ただ、海外と日本のオンライン診療の事情が異なっていて、海外では、コロナ以前からオンライン診療の必要性から積極的に取り組んでいたのに対し、日本では、コロナ対策としてやむを得ずオンライン診療を緊急的に取り入れたというところに大きな違いがあります。

日経新聞記事では、オンライン診療を「時限措置」としています。

緊急事態宣言が延長されたことを受けて、日本医師会の松本吉郎常任理事による記者会見で、「初診からのオンライン診療は、情報がない中で診療をするため、大変危険だと指摘してきた。今回の政府方針は、非常事態のもとでの例外中の例外という認識だ」と述べています。

日本医師会としては、全くの初診からのオンライン診療の実施は、情報のない中での問診と視診だけの診療や処方となるため大変危険であると主張してきています。

その上で、今回の措置については、「この非常事態の下、患者や医療従事者の感染を防止し、地域医療の崩壊を避けるための特例中の特例であり、例外中の例外である」との認識を強調しています。

さらに、今回の措置を適用するに当たって、高齢者や透析患者、妊産婦などが重症化する恐れがあること、また、在宅医療を受けている医療的ケア児や重度心身障害児・重度心身障害者やその家族にも目を向ける必要があること等を指摘し、改めて、各都道府県医師会に対して、初診によるオンライン診療についてもしっかりとした検証・協議を行うよう、都道府県行政との連携を求めています。

一方、都道府県行政に対しては、オンライン診療に関して、常に問題のある事例を収集し、場合によっては定期的な開催だけでなく、臨時に開催するなど迅速に検証を行い、関係医療機関への指導を図るなどの対応を求めた上で、「事態が収まり次第、速やかに、通常の診療である対面診療に戻し、安全で安心できる医療の本来の姿を取り戻すべき」としています。

ただ今回の規制緩和は感染が収まるまでの時限措置であることに対し、ロコクリニック中目黒(東京・目黒)の瀬田宏哉医師は「新型コロナ収束後もオンライン診療を活用できるよう、国は制度整備を進めてほしい」と訴えていることを、日経新聞には紹介されています。

日本のオンライン診療環境は……

まず言葉の定義ですが、「遠隔医療」は情報通信機器を活用した健康増進、 医療に関する行為」と定義されていて、テーマとなっているオンライン診療、オンライン受診勧奨、遠隔医療健康相談、 オンライン診療支援者、診断行為等が含まれます。

医師法第20条は、
「医師は、自ら診察しないで 治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若し くは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで 検案書を交付してはならない。但し、診療中の患 者が受診後24時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については、この限りでない」
と、いわゆる無診察診療の禁止を謳っています。

この法令の解釈を平成9年の局長通知で示し、その後2度にわたって通知の改正を行ってきました。

2011年3月31日には、
「診療は、医師と患者が直接対面して行われることが基本であり、遠隔診療は、あくまで直接の対面診療を補完するものとして行うべきものである」
としています。

また、2005年に「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を公表し、累次の改正を行ってきました。2018年4月から診療報酬上にも「オンライン診察料」が新設されました。

Next: ドクターに聞けば、通常診療よりは点数は低いです。病医院経営から見れば――

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