日本IT団体連が認定した情報銀行は3社
情報銀行の構想が明らかになってからすでに4年余りが経過し金融機関やIT企業を中心に個人情報の利活用を事業化する企業は増えてきたのは事実。キリンホールディングス、スカパーなど多くの企業がさまざまなかたちでサービスの実証実験を行っている。
情報銀行は国の許認可事業ではないが、業界団体の日本IT団体連盟は管轄官庁の総務省が定めた認定基準などの指針をもとに、事業者の情報管理の体制づくりなどを審査し、認定を行っており、この認定を受ければ公的なお墨付き得たということになる。
日本IT団体連の認定を初めて受けたのは、「三井住友信託銀行」とイオングループの「フェリカポケットマーケティング」の2社。日本IT団体連盟が設立されてから3年後の2019年6月のことで、認定のハードルはかなり高そうだ。
三井住友信託は健康上の活用、フェリカポケットマーケティングは主に消費者の購買履歴を中小企業などに提供し、商品開発に活かしてもらう考えだ。
同年12月、3社目の認定を受けたのが「Jスコア」だ。同社は2016年11月にソフトバンクとみずほ銀行が折半出資で発足させたネット起業で、独自に信用スコアを作成し、それをもとに個人向けの融資(「AIスコア・レンディング」)を行っている。
Jスコアが行う情報銀行としての業務は、信用スコアで得た個人情報を企業に販売し、個人情報の提供者に対してその対価を支払うことになる。
相次ぐネット企業の不祥事
デジタル情報化社会にあって、個人情報の流出事件は業種を問わず後を絶たない。企業の個人情報の取り扱いに対する姿勢が疑問視される事件も多い。
ポータルサイトのヤフーは、昨年7月からサイトの利用者の信用度などを点数化して提携企業に提供する信用スコアサービス「ヤフースコア」を始めた。しかし、サービス利用に同意する仕組みの説明が不十分だったことから利用者の批判を浴び、今年8月末、わずか1年でサービスを終了した。
リクルートキャリアが運営する就職情報サイト「リクナビ」が、就活生の内定辞退率予測を本人の同意を得ずに企業に販売していたことが昨年8月に発覚。同社は、個人情報の不正利用を監視・監督する個人情報保護委員会から、業務改善勧告を受けた。
今年の9月に明らかになった「ドコモ口座」事件は、単にドコモ口座だけにとどまらず、電子決済サービスや銀行のセキュリティーの在り方に不信感を抱かせる結果になった。さらに、自分の個人情報が簡単に第三者に流出し不正利用されてしまうという恐怖感を利用者に植えつけることにもなった。
かつて日本は個人情報の取り扱いについて鷹揚だった。自治会名簿には氏名、住所、電話番号が載っていたし、書籍や雑誌の著者のプロフィール欄には当然のように住所などの連絡先が書かれている牧歌的な時代があった。
しかし、いまは違う。SNSにプライベート情報を書き込めば、世界中に拡散する時代だ。おのずと個人情報の取り扱いには慎重になる。IT企業に個人情報を提供するのを不安に思う人も多い。まして、その個人情報が企業間で売買されることに抵抗感を覚える人はさらに多いだろう。