日本郵便の半数近くが契約社員。手当支給なら純利益が吹き飛ぶ?
日本郵便という企業を相手取った、非正規雇用の権利を勝ち取った裁判であったということが注目されましたが、その見方は2通りあると思われます。
・日本郵便だから特殊事情
・日本郵便だから全国に広まる
前者は、給料体系だけでなく、社内の従業員ヒエラルキーが、一般の企業とは異なった形態になっていることもあり、例えば正規雇用者の諸手当が多くて、もともと優遇されていることで、あまりにも正規と非正規との間の格差が大きすぎるということもあります。一般企業ではそれほど格差はなく、ましてや中小企業の場合は、正規雇用の待遇も決して良くない所も多いので、正規・非正規の格差は殆ど無い場合もあるのかもしれません。
後者の場合は、この動きが全国の企業に波及するとなれば、企業の収益を圧迫し倒産が増えるのではということを懸念する声もあります。なにせ最高裁判決ですからね。影響力は大きいです。
昨年度の郵政連結決算を見ると、売上は約12兆円、うち人件費は約2兆5,000億円、純利益が約5,680億円でした。日本郵便は、従業員約39万人のうち、非正規雇用は約18万5,000人、半数近くを契約社員が占めています。
非正規雇用の内訳は、以下とのことです。
・契約期間に期限のある有期雇用の社員がおよそ9万5,000人
・契約期間に期限のない無期雇用の社員が9万人
正社員であれば、以下が支給されます。
・扶養手当は家族1人につき月額1,500円~1万5,800円
・年末年始勤務手当は1日あたり4,000円~5,000円
日本郵便側は、最高裁判決を受けて、全額かどうかはわかりませんが、非正規の契約社員にもこれら手当を支給することになるとなると、例えば人件費が、今の2割ほど増えるとなれば、その額は約5,000億円とすると、それだけで今の純利益が吹っ飛んでしまいます。土曜日休配を決めたのも、ひょっとしたらこのことが関係しているのかもしれませんね。
あくまでも机上の話ですが、このような状況が全国の企業、特に中小企業に同様なことが起きないかという懸念が出てきました。業種にもよりますが、中小企業での非正規雇用の割合はかなり大きいと思われますからね。
同一労働同一賃金の真の意味とは
当初、「同一労働同一賃金」という考え方は、外国人労働者を広く受けいれる前提として出てきたものだと、個人的には理解していました。つまり、同じ業務で安い賃金労働者を受け入れることで、高い賃金を引き下げるために利用するものだと思っていました。ひねくれた考えですね。
その前提に立つと、非正規雇用者にボーナスや退職金を認めない判決は合点がいきます。
ところが、日本郵便での判決に関しては、労働者側の訴えをほぼ全部を受け入れた格好になっています。
そこで改めて、「同一労働同一賃金」という言葉の本当の意味を考えてみました。どうも、世の中で使われている意味とは違うところに、言葉の本質があるように思えます。
いま語られている認識としては、「同じ仕事をしたら、同じだけの賃金を払うべきだ」という、不平等な待遇を強いられている側からの訴えのように思えます。
厚生労働省では「正社員と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差」を是正するものとして位置づけているのが「同一労働同一賃金」としています。一般には、同じ職場内での賃金格差是正のイメージがあると思われます。
「同一労働同一賃金」という言葉には英語表記があります。「equal pay for equal work」となっています。
国際労働機関(ILO)では、基本的人権のひとつとなっていて、性別、雇用形態(まさにフルタイム、パートタイム、派遣社員など)、人種、宗教、国籍などに関係なく、労働の種類と量に基づいて賃金を支払う賃金政策が同一労働同一賃金だとしています。
そうなると、日本にある学歴差別も論外だということになるのでしょうかね。この「同じ仕事」の捉え方にポイントがあるようです。