企業倒産が前提の「同一労働同一賃金」
ただし、労働者側に再就職しやすい環境を整えることが前提にあり、そのために国は、積極的に労働者を支援する仕組みが必要になります。
スウェーデンの場合は、手厚い失業保険があり、技術支援の教育システムも準備されています。さらに消費税率の違いや人口の違いもあります。スウェーデンの消費税率は25%、ただし軽減税率制度を取り入れています。人口は東京とほぼ同じぐらいですかね。消費税率が高い分、教育費は大学まで含めてすべて無料、医療は18歳以下は無料、成人も自己負担が年間で最大900クローナの診察料(約1万3,000円)、1,800クローナの薬代(2万5,900円)と安く抑えられています。ちなみに、スウェーデンには相続税はありません。
企業倒産が前提の「同一労働同一賃金」と考えれば、日本郵便の正規雇用と同様の手当を非正規雇用にも付与することを命じた最高裁判決が、他業種、他企業でも、も同じような待遇を非正規雇用に与える動きが加速することになり、そのことで企業倒産、特に中小企業の倒産が増えることになりそうですね。
スウェーデンのようなセーフティーネットが日本にはないままに…。ですけどね。
日本版「同一労働同一賃金」が導入された経緯
第1次安倍晋三内閣において「労働ビッグバン」が提唱されていましたが、当時、年金記録問題が社会的大問題となっていて、相次ぐ閣僚不祥事ドミノもあり、法案を成立させることはできませんでした。
2016年、第3次安倍第1次改造内閣で「ニッポン一億総活躍プラン」を閣議決定し、この中で「同一労働同一賃金の実現に向けて、我が国の雇用慣行には十分に留意しつつ、躊躇なく法改正の準備を進める」ことが明記されました。
2019年4月1日:大企業の同一労働同一賃金制度が施行
2020年4月1日:労働者派遣法の同一労働同一賃金制度施工
2021年4月1日:中小企業、パートタイム労働者、有期雇用労働者に対して施行
安倍政権発足時に、「デフレからの脱却」のスローガンのもとに“三本の矢”に例えた経済政策(いわゆるアベノミクス)と同時に、産業競争力会議を立ち上げられていました。
その産業競争力会議で「産業の新陳代謝」が強く訴えられていました。特に中小企業を淘汰することを打ち出していました。
産業競争力会議では、「日本経済の長期にわたる停滞の原因が、負け組にもかかわらず倒産しない“ゾンビ企業”がはびこる一方、新規事業や新産業が生まれないことにある」という問題認識が述べられていました。
安倍政権発足時の産業競争力会議で注目すべきは「新陳代謝」という言葉を使い、競争力のない企業の「退出策」に手を打つ姿勢を見せたことにあると言われています。
つまり、国際競争を戦える企業を作るには、強い企業をより強くする一方で、“ゾンビ企業”は潰すこともいとわないという考え方です。“ゾンビ企業”とは、赤字を出し続けて法人税を払わない企業のことで、経営が破綻しているにもかかわらず、銀行や政府機関の支援によって存続している企業のことを指します。まさにホラー映画のゾンビです。