時間給の仕事は「高嶺の花」
今どきはピザや弁当の配達、深夜のコンビニ店員、スーパーのレジといっても、当然、履歴書提出により職務経験を見られますし、なによりこうした時間給の仕事は求人先自体が驚くほど募集が集まります。
学生のような存在でない限りは、まったく異質の業界から雇用にこぎつけるのは至難の業になっているのが実情です。
私の知人でも、銀座のクラブに勤めていた女性で、下手をすれば普通のサラリーマンよりよほど稼いでいた人でも、クラブという箱が軒並み閉店して、そもそも業界としての市場規模が維持できなくなったことで同じ仕事を続けられず、ようやく探しに探して、ピザの配達から宅急便のドライバーに転職したというすさまじい経験をしている人がいます。
また、大学院まで進学して博士号を取得したのにもかかわらず、大学の都合で教員をクビになったなどという高学歴者も、アルバイト先を見つけるのには相当苦労しているようで、正確な学歴や職歴を履歴書に書くと逆に敬遠されることから、そうしたフィルタリングのない仕事としてあえてUberEatsのデリバリーを行っているなどという話もあります。
雇用の現場は、我々がまったく想定していないような恐るべき状況に陥っていることを認識させられます。
供給過剰でもUberEats側はまったく困らない
こうした人材を個人事業主として契約するUberEatsのほうは、実際のデリバリーの出来高だけに報酬を支払えばいいわけですから、デリバリー人材インフレが起きても、まったく痛くも痒くもない状況。
冬の寒さが一段と厳しくなるこの時期でも、主要な街のあちこちにウーバー地蔵を見かけはじめている年の暮れです。
UberEatsをはじめとするデリバリービジネスが悪いとは言いませんが、仕事を探すとこれしか選択肢がないというのは、新型コロナ禍といえども異常な状況です。
株式市場ではすっかりポストコロナを織り込む動きになっていますし、そもそも国や中央銀行が緩和措置を増やせば増やすほど、実態経済とはなんの関係もなく株価だけが上がる始末。
その陰で、労働需給の実態がこんな厳しいところにあることを、政治家ももっとしっかり認識しなくてはなりません。