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世界株価の下落は単なる調整か、金融危機の始まりか?世界を二分する株価・債権価格予想の当たる確率を検証=吉田繁治

2022年冬から23年初頭の株価や債券価格の予想は、2つに大きく分かれています。両者の内容を紹介しながら、私なりの見解を付け加えて解説します。(『ビジネス知識源プレミアム』吉田繁治)

※本記事は有料メルマガ『ビジネス知識源プレミアム』2022年10月10日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

(1)市場のおよそ60%の認識

株価や債券価格について、下落は「調整的」だ。23年初頭からは底打ちして上がるという見方があります。

この見解をとる人々は、米国の物価上昇率は8%台から下がっていく。コロナ・パンデミックで低下していた労働参加率が回復して、失業率は上がる。FRBは、「不況下の物価高」を認識するようになり、22年11月、12月(または23年3月)からは、利上げの幅を1回0.75%から、0.5%か0.25%に下げていく。(注)FOMCは1年に7回開かれます。

利上げ幅の縮小とともに、年初来25%(S&P500)下げている株式市場は底打ちし、回復に向かう。(注)40%下げくらいから、米国金融危機でしょう。

外為相場でも、ドル/円は145円の円安を頂点にして、140円、130円の円高方向に向かう。これが、一つ目の見方です。

(2)市場の約40%による(1)と反対の認識

世界は2023年央ころからの金融危機に向かっている。確率は70%か。

FRBは、生鮮食品を除くコア物価が、インフレ目標の2%台に下がるまで利上げを緩めない。

22年8月のCPIは8.3%上昇だが、FRBが金融政策に参照しているコア物価は、6.3%の上昇である。あと4ポイント(%)、物価を下げる必要がある。

2022年冬(11月、12月)は、9月と同じ0.75ポイントの利上げだろう。

FRBは、20年4月からの財政出動1.9兆ドル(266兆円の追加予算)で発生した

1)コロナ金融バブル(S&P500が1.5倍)と、
2)年20%も上がってきた住宅価格バブル」の退治を行う予定だろう。

米国株価は、短期で上がっても、下がる傾向を続ける。

年20%上ってきた米国の住宅価格も、住宅ローン金利が6.7%上がる2022年冬からは、ピークアウトする。

金利が6.7%になると、ローンの返済と利払いが約40%も増えるからである。

一方で日銀は、CPIが3%に上昇しても(22年8月が3.0%、生鮮を除くコア物価でも2.8%)、23年3月の黒田総裁の任期まではゼロ金利を続ける。

現在は3%の日米金利差が4%台に上がり、「ドル/円」は150円に近づくときがあるかもしれない。

2022年の年初からマイナス25%のS&P500が、マイナス40%に下がるころから、「米国・欧州→中国とドル建て負債が大きな新興国→日本」の順序で、金融危機になっていく(70%の確率)。

金融危機になるかどうかは、

1)米国FRBのインフレの認識がそれくらい深刻か、
2)インフレ対策として、どの程度利上げをするかにかかっている。

日本では異次元緩和をしても、平均賃金の上昇がなく需要は増えなかったので、インフレにはならなかった。

米国では、コロナ後に、

1)財政支出の1.9兆ドル(266兆円)増加から、
2)時間給が5%から6%上がり、
3)失業率は完全雇用の3.5%に下がって、
4)株価以上に住宅価格も年20%も上がって、
5)ドル価値の下落であるインフレが構造化している。

失業が増えて時間給の上昇が止まり、住宅価格が下落に向かわないと、米国のコア物価インフレの6.3%は下がらない。失業率が下がっても賃金が上がらない日本と違い、米国では労働需給状況がすぐに賃金に波及する。
            
当方は、(2)の見方をしています。動学的不均衡の予想ですから、確率的です。あなたは、どちらでしょうか。

実力が伯仲しているスポーツの勝敗を当てるとき、技術要素、試合のときの精神、コンディションなどを変数にして、直感的な多変量解析をして判断しますが、経済・金融の予想も、これと同じです。仮に「Aが勝つ」としても100%ではなく70%や80%の確率です。

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