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「パナマ文書」の目的と国内マスコミが報じない国際金融の闇=吉田繁治

『タックスヘイブンの闇』(著:ニコラス・ジャクソン)の驚くべき主張

ジャーナリストのニコラス・ジャクソンとそのチームは、ときには命の危険を冒しながらタックスヘイブンを調査し、『タックスヘイブンの闇(邦訳2012年)』をまとめています。

【オフショア金融のスケール】

オフショア世界はわれわれのまわりのいたるところある。世界の貿易取引額の約半分以上が、少なくとも書類上はタックスヘイブンを経由している。すべての銀行資産の半分以上、および多国籍企業の海外投資の三分の1がオフショア経由で送金されている。国際的な銀行業務や債券発行業務の約85%はいわゆるユーロ市場……国家の枠外のオフショア・ゾーンで行われている。
出典:『タックスヘイブンの闇』 P17

この「世界の貿易取引額の約半分以上が、少なくとも書類上はタックスヘイブンを経由している」とはどういうことか?

【バージン諸島】

例えば、人口2万5000人の英国領バージン諸島には、世界の80万社の企業があります。国をまたがって輸出入をしている多国籍の流通企業は、例えば、バナナの輸入で、書類上はバージン諸島の子会社を経由したようにする。

【事例】

最初の、ホンジュラスからの輸入価格は$100ドルだった。バージン諸島の子会社(卸業務)はその$100に付加価値をつけて、米国の輸入商社に$200で売る。米国内の輸入商社は、$50ドル付加価値をつけて$250でチェーンストアに卸す。チェーンストアはそれを$400で売る。

このときの、バナナの輸入商社のマージンは、本当は$150です。しかし、米国内の$50にしか課税されません。バージン諸島では、世界の80万社が、輸出入の経由基地としてバージン諸島を使っています。米国の税法は、異なる法域である英領バージン諸島には及ばないからです。
(注)タックスヘイブンになった米領バージン諸島にも及びません

世界の貿易取引額は、世界のGDPの約20%($12兆:1300兆円)でしょう。その50%は$6兆(650兆円)です。これが課税を逃れ、法の適用を逃れています。

オフショア世界はわれわれのまわりのいたるところにあるとシャクソンが言うのがこれです。バナナを輸入商社から買っている食品スーパーすら、輸入食品では、オフショア金融にかかわりがあることになります。

「すべての銀行資産の半分以上がオフショアにある(シャクソン)」IMFも2010年時点で、島のオフショアセンターだけでも$18兆(1944兆円)のマネーがあるとしています。そして、この金額はおそらく過小評価だろうと付記しているのです。

【米国大手企業の83%、欧州大手企業の99%にオフショア子会社】

米国の会計検査院(GAO)は2008年に、米国の代表的な大手100社のうち83社がタックスヘイブンに子会社を持っていると報告しています。欧州の大手100社では、99社がオフショア子会社をもつという。この子会社を使っているのは、圧倒的に銀行です。

日本の株価は、オフショアからの売買という要素を抜きにしてはまるで語れません。オフショアが売り超なら下がり、買えば上がるからです。

【日本の株の売買】

オフショアからは、2013年が15.1兆円の買い超、2014年8500億円の買い超でした。2015年は、2700億円の売り超です。そして2016年は1月から3月の3か月間で5兆121億円の売り超です。これが、2016年の株価が下がった理由です。上がるケースは政府のPKO(官製相場)でしかない。

国際的な金融の本流とデリバティブでの金融機関の間の取引は、オフショアになっているのです。

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