厚労省の審議会は14日、最低賃金を全国一律28円引き上げ、全国平均を時給930円とする目安を示しました。この20年で最大の上げ幅ですが、これでも主要先進国と比べると低い水準です。日本の最低賃金で働かされる外国人労働者に対して、海外から“人身売買”と批判する声も聞こえてきます。(『らぽーる・マガジン』原彰宏)
※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2021年7月19日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
最低賃金未満の賃金は「違法」
皆さんは、日本の労働者の最低賃金はいくらかご存知でしょうか。その金額を割り込む給料は「違法」になるわけですが、その最低ラインはいくらでしょう。
現在の全国平均賃金は、時給で902円になっています。これでも、2020年度にコロナ禍でありながら「1円」引き上げられた結果なのです。
地域別最低賃金一覧表が、厚生労働省ホームページにあります。地域によって、最低賃金が大きく違うのがよくわかります。地域間格差とでも言うのでしょうか、やはり地方の賃金の低さは、目を見張りますね。
厚生労働省ホームページには、最低賃金の解説も載っています。
「使用者が労働者に支払わなければならない賃金の最低限を定めた制度」となっていて、たとえ最低賃金額より低い賃金を、労働者・使用者双方の合意のうえで定めても、それは法律によって無効とされ、最低賃金額と同様の定めをしたものとみなされるようです。
つまり、最低賃金以下の数字は、この世に存在してはいけないのです。
もし使用者が労働者に最低賃金未満の賃金しか支払っていない場合には、使用者は労働者に対して、その差額を支払わなくてはなりません。
地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、最低賃金法に罰則(50万円以下の罰金)が定められています。なお、特定(産業別)最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、労働基準法に罰則(30万円以下の罰金)が定められています。
また、地域別最低賃金の他に、特定(産業別)最低賃金というのがあります。これも厚生労働省ホームページに一覧(PDF)があります。
派遣社員の場合は、派遣先の最低賃金が適用されます。派遣会社があるところの水準ではありません。この基準は、ボーナスや残業代は対象外です。
最低賃金3.1%アップ、時給930円に
この全国平均最低賃金時給「902円」を、この度「930円」の28円引き上げることが、中央最低賃金審議会(厚生労働省諮問機関)小委員会で14日に決められました。
上げ幅にすれば3.1%、これは2002年に時給で賃金を示す方式になってから最大の上げ幅だそうです。
コロナ禍での大きな賃金上昇は、人手不足を表し、景気が良くなっていく兆しとされているのでしょうが、果たしてこの水準で喜んでよいのでしょうかね。日本労働組合総連合会の方が「連合がめざす『誰もが時給1000円』に向けて一歩前進」とコメントしていますが、なんだか「おいおい…」という感じです。