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カジノ誘致で再び波乱「横浜市長選」が握る菅政権の命運。秋の衆院選を占う試金石に=原彰宏

争点から外された「カジノ誘致」

林市長が表舞台に出してきた「横浜カジノ誘致」も、小此木八郎氏が「カジノを誘致しない」と明言したことで、選挙の争点から外されました。

「反カジノ」で“漁夫の利”を得ようとしていた人たちは、はしごを外された感じになっているのではないでしょうかね。

最後に名乗りを上げた松沢成文参議院議員は日本維新の会所属、「カジノ誘致反対」の旗を掲げたままでは、大阪吉村知事や松井市長の応援はもらえないでしょう。

10人候補予定者のうち、林市長を含む2名が「横浜カジノ誘致賛成」、残り8名が「反対」という構図は、実質「自民小此木vs立民山中」では、ありえない話になってしまいます。

これまでカジノ誘致を支持してきた自民党横浜市議は林市長を応援するとしていますが、どうもその体制は盤石ではなさそうです。

「ハマのドン」なくして選挙は勝てない…。「ハマのドン」をめぐる綱引きが激しく行われていて、「ハマのドン」を手繰り寄せた方が勝つという構図になっているのは、よくわかりました。

カジノが争点にならないとすれば、横浜市長選挙の本質は、一体どこにあるのでしょうか。

郷原信郎氏出馬表明が横浜市長選の雰囲気を変えるか?

「市民と決める市民の政治」。これが郷原信郎氏の、横浜市長選挙におけるスローガンのようです(※編注:原稿執筆時点2021年7月30日。郷原信郎氏は8月5日、横浜市長選への立候補を取りやめると発表しています)。

カジノ誘致に関しても、単に反対するのではなく、住民投票を実施して住民に決めてもらうことを提案しています。「市民のための政治」という、ごくごく当たり前の言葉を全面に出してきているところに、その当たり前の言葉に目を引かれることに、昨今の政治のあり方の問題を浮き彫りにしているようにも思えます。

「市民のため」という表現、すごく新鮮な感じがしますね。郷原氏の言う「住民投票での決着」は、カジノ誘致の息の根を止めることにつながるというものです。

地方自治は、市議も首長も、選挙によって選ばれます。「二元代表制」という、どちらも「民意」です。権限の優劣はあるでしょうが、トップが“反対”でも議会は“賛成”ということは常にあり、それが互いを牽制し合う働きでもあります。

小此木氏の反対理由は「環境が整っていない」からであって、「その後、コロナ感染収束によって環境が整ってきた」場合には、再びカジノ誘致に乗り出す可能性だって考えられます。

だいたい政治家がはっきりとものを言わないときには、態度を表明していないのと同じで、どっちに転んでも逃げられるように布石を打っておくものです。自分には火の粉がかかっても、やけどをしないようにしているものです。

郷原氏は「カジノ誘致の是非を、市長選で決着をつけるのではなく、住民の意思で白黒つけよう」という提案になっています。その郷原氏は、カジノ誘致の是非ではない、市長選の争点を取り上げてきました。

それが…「政党、団体には一切頼らず、『横浜市を、菅支配から市民の手に取り戻す』ことをめざす」というものです。「菅支配からの脱却」という、とんでもない旗を掲げだしたのです。

これで横浜市長選挙は「親菅vs反菅」という構図ができあがったように思えます。

出馬表明での記者会見では、以下のように表明しました。

・横浜市を、菅支配から、市民の手に、取り戻す
・カジノに頼らない山下ふ頭の活用
   生鮮食品市場を中核とする「食の賑わい施設軍」
   フィッシャーマンズワーフを観光の起爆剤に

ただ、野党分裂選挙は自民党を利するだけとして「解除条件付き出馬表明」として、山中竹春候補が、野党一本化候補としてふさわしいと認めた場合、自身の出馬を取りやめることも示唆しました。

郷原信郎氏は、横浜市コンプライアンス委員会の顧問を務めていました。出馬に伴い顧問は退任しましたが、立憲民主党江田憲司氏から「広島参議院再選挙に出馬しなければ横浜市長選に出てほしい」と言われながらも、出てくる候補者を見ているうちに、横浜コンプライアンスへの重大な悪影響を考え、自身が出馬表明したと述べています。

この間、横浜DeNAベイスターズ初代社長の池田純市の名前も挙がっていました。結局は、立憲民主党も「勝てる候補」というのが、候補者選考基準となっているのではないでしょうか。

郷原氏が指摘している山中竹春氏への不信はいろいろありますが、なかでも、昨年8月に吉村大阪府知事らが行った、いわゆる「イソジン会見」で、データ解析者として山中氏の名前が表示されていた問題を取り上げています。

これら一連の郷原信郎氏の主張は、自身の「郷原信郎が斬る」で紹介されています。
※参考:横浜未来構想会議の提言で示された「横浜市長選後の住民投票」は“大きな流れ”となるか | 郷原信郎が斬る(2021年7月23日配信)

池田純氏の立憲民主党の誘いを断った経緯を見れば、立憲民主党も自民党と変わらないことをしていることがよくわかります。郷原信郎氏も、そのことを強く指摘されています。

※参考:横浜市長選挙、立憲民主党は江田憲司氏の「独断専行」を容認するのか〜菅支配からの脱却を – 郷原信郎 – 選挙ドットコム(2021年7月19日配信)

池田氏の主張はすごくよくわかります。まさに立憲民主党も、「ザ・政党」というか、なんとも言えない、政治の永田町の“嫌なもの”を感じますね。

ダイヤモンド・オンラインに掲載されている池田純氏の「さいたまブロンコス代表の退任から横浜市長選挙出馬の噂まで、その真相と真意について話します」という記事で、横浜市長選挙立候補打診の経緯と断った経緯を説明されています。

本当に政党って、政治家って…という感じですね。

この中で、「昔ながらの出馬要請でした」と語る池田氏の主張の一部を取り上げます。

カジノ反対なら全面的に応援と支援をする」「党を挙げて協力する。選挙資金も数千万円単位で用意するので推薦させてほしい」などなど、権威が欲しい人や、お金や利権に目がない人ならすぐにうなずくような口説き文句かもしれません。しかし、その背景には、立憲民主党が私の背後から横浜市をコントロールしたい、秋まで続く自民党との国政での戦いに横浜市長選を利用したいという意図が透けて見えます。<中略>

立憲民主党からの要請は政党の文脈に乗ることでした。そうした役割は願い下げです。なんて時代錯誤なのだろうか、私にはそうとしか感じられませんでした。<中略>

横浜の市民はもう過去の「白紙論法」や東京五輪の「なし崩しごまかし論法」には辟易しているわけですから。<中略>

選挙資金をもらって、しがらみにまみれて、背後からとやかく言われて、忖度しながら発言し、行動するタイプではありません。民意を無視して、嘘をついたり、ごまかしたり、なし崩しに何かを進めるといったことはもってのほかです。少なくとも、立憲民主党が期待する市長にはとてもなれないと思いました。

出典:さいたまブロンコス代表の退任から横浜市長選挙出馬の噂まで、その真相と真意について話します – 池田純のプロスポーツチーム変革日記 | ダイヤモンド・オンライン(2021年6月26日配信)

いやあ、全文を取り上げたいくらいですが、ぜひ「ダイヤモンド・オンライン」の池田純氏の言葉を聞いてください。

記事にもある池田純氏の「そもそも市長とは、市民の意思や自分の中から湧き出た目的を実現したいからその役割を担うのであって、『市長になることそのものが目的』の人では務まりません。」というセリフ。それと「今回の横浜市長選にとって重要なことは、『コロナ対策をどうするか』ではなく、『コロナ後の街づくりや産業構造の立て直しをどのようなビジョンで進めるか』ということです」という部分、まったく同意ですね。

私が冒頭で取り上げた「勝てる候補」選びに終止する政党政治の愚かさを痛感します。横浜のことを憂いで立ち上がる人を選びたいという思いで、選挙したいですね。

Next: テクニックが勝敗を分ける日本の選挙。横浜市長選の結果はどうなる?

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