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だから日本だけ賃金が上がらない。利上げできないほど景気最悪、“悪いインフレ”からどう生活を守るか=原彰宏

コロナからの経済回復も遅い日本。米国と何が違うのか?

米国市場においては、景気が上向きかけていたときに世界的に起きた出来事が「covid-19 パンデミック」です。

当初は、新型コロナウイルスが何者かはわからず、とにかく感染拡大を防ぐために、人々の行動を全面的に制限しました。

人と接触しなければ感染者数は拡大しない…「ロックダウン」ですね。無理やり人々の経済活動を止めたのです。需要側で大きなブロックを掛けたことで、供給側がすべてストップしたのです。

工場を無理やり止めた。失業者が溢れ、経済は完全に止まりました。海外ではこの事態を重く受け止め、大盤振る舞いの財政出動で、米国では失業保険給付金を大幅に引き上げ、働いているときよりも実入りが良くなったとまで言われました。

このコロナ対策も、日本と海外では大きく異なります。大規模な財政で給付金を出す海外と、財政の紐を緩めることなく給付を渋る日本…。

「供給側の強引な停止」「失業給付金額大幅アップ」…ここがポイントです。徐々に新型コロナウイルスの実態がわかりだすと、人びとの活動も再開され経済が動きだしたのは良いのですが、止まっていた供給側のインフラはすぐには再稼働できないところもあり、また十分な失業給付金をもらっていた労働者が労働市場に戻ってこないことからの人手不足もあり、供給サイドが逼迫してきました。

強制的に経済活動を止められた反動と言われる「リベンジ消費」が見られ、需要側が一気に膨らんだにも関わらず、供給側がまったく機能しない状態になりました。変則ではありますが一種の「ディマンド・プル」型インフレが発生しました。

需要が引っ張る形ではありましたが、供給側のひっ迫状況により、また人手不足で人件費が高騰したこともあり、供給コストが上がる「コスト・プッシュ」型インフレの様相が強くなり、インフレが加速しました。

「需要過多 × 供給ひっ迫」で、米国ではCPIは総合で前年比「8.3%」にまで上昇しています。この激しい上昇は、ここまでの解説からも素直に頷けますね。

エネルギー資源高騰でインフレ加速

インフレを語るうえで重要なものに「エネルギー価格」があります。

戦争状態になったことから、地政学的リスクでエネルギー価格が高騰しました。ウクライナ紛争は、ウクライナから小麦が輸出できないことで世界の小麦価格が高騰するという問題も生んでいます。ロシアへの経済制裁の報復で、西側諸国に天然ガスなどのエネルギー供給を止めたことも、エネルギー価格を押し上げています。

価格も問題ですが、経済活動に欠かせないエネルギーそのものが不足する事態を招き、EU諸国、とくにドイツではロシアにエネルギー供給網を依存しているだけに、ロシア側から天然ガスが供給されないのは国の存亡にも関わってきているのです。

EU諸国のインフレ懸念はこれから、ますます深刻になっていきそうです。

米国にはシェールガスやシェールオイルがあるので、ロシアによる報復措置の影響は少ないといえます。それでも米国でのあの物価高ですから、どれだけインフレが加速しているかよくわかりますね。

米国が、景気減速を犠牲にしてでもインフレを抑えたいとするFRBのパウエル議長の思いも非常にうなずけます。

需要が伸びているから利上げができる。米国の動きを追いかけるように、EUではこれからエネルギー価格高騰によるインフレが加速しそうで、金融政策における利上げはこれからだと思われます。

世界では、インフレ抑制のための利上げが相次いで行われています。

Next: 日本だけ利上げしないで大丈夫か?国民に“悪いインフレ”が直撃

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