日本国民に“悪いインフレ”が直撃
スイスも利上げを行いマイナス金利を終了しました。これで世界でマイナス金利を採用しているのは日本だけになりました。
世界で利下げをしているのは、トルコと中国と日本だけになりました。そう、中国も景気が良くないのです。これは世界の供給網のひっ迫にも繋がりますし、消費国としての中国の不況は世界経済にも大きな影響を与えます。
・デフレよりもインフレの方が良い
・需要は伸びるのは良い
・円安だと外国人観光客誘致にはメリット
…徐々に変わっていけば、それなりのメリットも享受できるとは思うのですが、なにせスピードが想定以上の早さですので、いろんなことが追いつかないでいるようです。
このスピード違反を起こした原因が、covid-19のパンデミックによるロックダウンからのリベンジ消費と、ウクライナ紛争にあります。
このインフレ要因は世界共通で、日本も同じインフレの波を被っているのですが、日本の物価上昇率は総合で3.0%となっています。
米国に比べれば低いものではありますが、米国では需要も伸びていて「ディマンド・プル × コスト・プッシュ」のインフレのように思えるのですが、日本は給料が上がらないので需要は伸びず「コスト・プッシュ」だけの物価高と思われます。
「菅義偉前総理による携帯料金引き下げがインフレを押し下げている」と指摘する人もいます。それでも日本では需要が伸びていないということは、それは「悪いインフレ」の典型となるのですけどね。
給料が上がらないなかでの物価高は、たとえ3%という数字でも、実生活は厳しいですよ。何より生活コストである電気代などの値上げが家計を直撃します。
中東における原油価格が落ち着いてきたにも関わらず、日本ではガソリン価格が下がらないどころか上がっているところも見受けられます。
日本は利上げができないほど景気が悪い
円安で、日本のエネルギーコストが随分上がっています。ドル建て価格が落ち着いても円換算では高くなる…日本には「円安」という要素があるのです。
「日米金利差で円が安くなっている。だから日銀は利上げをすべきだ…」黒田日銀総裁に集中砲火を浴びせる声も日に日に高まっているようですが、いま利上げをすれば日本の景気はますますひどくなってくるでしょう。
とにかく景気が悪い。利上げができないほど景気が悪いのです。GDPギャップが大きくマイナス、つまり需要が伸びないデフレ状態であるということです。
ここまで「インフレ × 円安」のメカニズムをお話してきましたが、日本の産業構造、労働市場が変わらない限り、賃金上昇は望めませんし、世界がインフレから開放されても、日本だけは円安によるコスト高は解消されないでしょう。
つまり、日本だけがまったく出口が見えない状況だということです。こんな状況で、私たちの生活を守る処方箋はあるのでしょうか…。