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かっぱ寿司社長はなぜ前職・はま寿司の営業秘密を盗んだか。10月からも“値上げ無し”で劣勢の巻き返しを狙った矢先での最悪の事態に

大手回転寿司チェーンのかっぱ寿司を運営する「カッパ・クリエイト」の社長が、以前に勤めていたライバルチェーンの営業秘密に当たるデータを不正に持ち出したなどとして、不正競争防止法違反の疑いで逮捕された。

報道によるとカッパ・クリエイトの田邊公己社長は、ゼンショーに在籍していた20年10月ごろに、同社の回転寿司チェーンである「はま寿司」の仕入れ価格などに関するデータを持ち出し、さらに移籍後も元同僚から数回にわたり、はま寿司全店舗の売り上げデータをメールで受け取っていた形跡があるとのこと。

かっぱ寿司を運営するカッパ・クリエイトは「関係者の皆様に多大なるご迷惑とご心配をおかけし、深くおわび申し上げます。現在、事実確認を行っているところです」とコメントしているという。

逮捕された社長への同情的見方も

今回の逮捕容疑となった不正競争防止法違反容疑でもって、カッパ・クリエイトが警視庁の捜索を受けたのは昨年の7月のこと。

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その後まもなくして、田邊公己社長個人がはま寿司から同容疑で告訴される事態となっていたのだが、そこからさらに1年以上経った今回、ついに田邊社長の逮捕にまで至ったという格好だ。

かっぱ寿司といえば「ロープライスポリシー(低価格販売政策)」を掲げ、2000年代までは売上ベースで回転寿司業界のトップの座に君臨する存在だったのだが、2010年代に入るとスシロー、くら寿司、はま寿司といったライバルチェーンに次々と抜かれる展開に。2014年には、甘太郎や牛角などを運営する外食グループ「コロワイド」の傘下に入ったものの、ここ10年程は業界4位の位置にすっかり甘んじていた。

そんな状況下の2020年11月に、カッパ・クリエイトに顧問として入社したのが田邊社長。以前のゼンショーグループでははま寿司のほかに、ジョリーパスタやココスジャパンの社長も務めていただけに、コロワイド側から並々ならぬ期待を寄せられていたのは想像に難くないのだが、いっぽうでそれと同様に田邊社長が抱えるプレッシャーも相当大きかったのではとの見方も。

そもそもコロワイドといえば、約40年前に社長に就任し今も代表取締役会長として権勢を振るう、蔵人金男氏のワンマンカンパニーとして知られる組織。2017年には同社傘下会社の社員らに対し「人の話も聞いてない馬鹿野郎」「生殺与奪の権は、私が握っている。さあ、今後どうする。どう生きて行くアホ共よ」などと述べた社内報の存在が明らかになるなど、そのいかにもブラックといった企業体質が大いに取沙汰されたことも記憶に新しい。

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それだけに逮捕された田邊社長も、絶対に失敗はできないといった重圧から、はま寿司の営業秘密に当たるデータをいわゆる移籍の“手土産”としてしまい、さらには移籍後も元同僚から売り上げデータを受け取るという、相当に危ない橋まで渡ってしまったのでは……そんなある意味で同情的な推測も、一部では広がっているようである。

不祥事相次ぐ業界内で唯一“無傷”のはま寿司だが…

このところの回転寿司業界といえば、今回のかっぱ寿司にくわえスシロー、くら寿司、はま寿司という4つのチェーンによる寡占化が進み、お互いにしのぎを削りあっているといったところだが、そのいっぽうで近年では様々な不祥事の発生で世間を騒がせることも多いといった状況。

まず店舗数において業界トップの座に君臨しているスシローだが、今年6月に消費者庁から「おとり広告」を指摘され、再発防止を求める措置命令が出されたのを皮切りに、その直後には「ビール半額」と店内に掲出しておきながら、実際には定価で販売していたことも発覚。

さらに8月には、寿司に使用しているマグロの種類に関して、テレビ番組でアピールしていた種類とは異なるものを使っているのではという「マグロ偽装」疑惑までも浮上するという“不祥事3連発”によって、親会社である株式会社FOOD & LIFE COMPANIESの株価は、年始と比べて約半値近くまで下がってしまった。

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いっぽうでくら寿司では、山梨県内の店舗で店長を務めていた男性社員が、上司からの度重なるパワハラを苦に、店の駐車場で焼身自殺をしてしまうという痛ましい事件が。スシローにしてもくら寿司にしても、急激な事業拡大やライバル他社との激しい争いのなかで、その組織のほころびを感じさせるような出来事が頻発しているのだ。

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そこに来て、今回のかっぱ寿司のトップ逮捕という事態となったわけだが、そんななかで唯一ノーダメージなのが、今回の件でデータが盗まれてしまう側となったはま寿司。それだけにSNSからは「残ってるのはま寿司だけ」「はま寿司、君が最後の砦だ!!!」といった声もあがっているのだが、とはいえそんなはま寿司の運営も、“ワンオペ”で有名なすき家のゼンショーだし……といった見方も多いなど、相次ぐ回転すし業界での不祥事に対し、消費者の視線はかなり冷ややかといったところだ。

折からの円安や物価高の影響は回転寿司業界にも及び、すでに高価格帯商品の値上げを実施しているはま寿司にくわえ、来る10月からはスシローとくら寿司でも、値上げを含む価格改定が予定されている。そんななか値上げをしないという選択で、今後の巻き返しを期していたであろうかっぱ寿司だったが、その矢先での社長逮捕で、大いに出鼻をくじかれる格好となったのは間違いなさそうだ。

Next: 「かっぱ寿司が社長の逮捕でわっぱ寿司に」

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