岸田首相は今後5年間で1兆円を「リスキリング(学び直し)」支援に投資すると発表しました。私たちの働き方はどう変わるのか。賃金は上がるのか?全貌が見えないので、10月に行われた内閣府・厚生労働省・経済産業省・日本経済連合会の講演「日経リスキングサミット~共に成長する社会の創出」と題したイベントに参加してきました。気になるのは、提携企業に外資系企業が名を連ねていることと、都立高校入試の民間委託「英語スピーキングテスト」受注で話題になったベネッセがまたまた登場していることです。(『 らぽーる・マガジン らぽーる・マガジン 』原彰宏)
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ふわっとしたままの「新しい資本主義」
岸田政権は、“脱新自由主義”を強くイメージさせる「新しい資本主義」を政権政策の中心に据えましたが、ただその政策の1つ1つは実に抽象的で、あまり具体的なイメージがわかないところがあります。
首相自身が口にしているのは「成長から分配へ」、とにかく「分配」が大事だと強調していますが、成長による“原資なし”でどうやって分配が成り立つのかは、まあ正直よくわからないですね。
「分配」のためには「賃金上昇」が必要とされていますが、この「賃金上昇」に関しては、私たちがイメージするものとは、ずいぶん様相が違う様子。
どうやら、人々の給料をあまねく上昇させるというものではないようで、「賃金上昇」という表現は、ダイレクトに私たちの給与支給額が上がる話ではなさそうなのです。
賃金を上げた企業には税制優遇があるとか政府調達で加点を行うとかの政策はあるようですが、賃金上昇は企業任せ。それぞれの企業が考えることで、国が直接手を出したり、お金を出したりするものではなさそうなのです。
企業側も、今の労働に関する法律では、一度上げた給料は企業業績の都合で下げることはできない現状において、正直、身動きがとれないというのが本音ではないでしょうかね。
岸田首相の切り札は「リスキリング」?
「賃金上昇 ✕ 人への投資」。岸田政権が求める「賃金上昇」の本質を知るものが、「リスキリング」です。
「人への投資」の一環として「リスキリング」は位置づけられ、その結果が「賃金上昇」につながるとしています。
エンゲージメント…企業と従業員は「契約関係」にあるという立場で考えれば、従業員は会社に利益をもたらし、会社はそういう従業員を多く抱え大切にすることで発展します。
会社は誰のもの…?そんな「問い」がかつて話題になりましたが、ファイナンスといった会社存続の上では「株主」が会社のオーナーであることは間違いありませんが、利益を生むためのオペレーションにおいては、従業員が主役であると言えるのではないでしょうか。
役員は、会社経営に携わるものであり、最終責任を負う立場です。したがって「会社は社長のもの」というのは、いかがなものでしょうね。
従業員が日々の活動から「利益」を生み、その利益で自らの給料が発生し、会社維持発展のための投資が行われます。またその利益の一部を、ファイナンスしてくれた株主にも還元することで、次の株式投資を呼び込みます。
この好循環を維持することが大事で、従業員側が一方的に会社に守ってもらうことを「権利」として主張しているだけでは、給料は上がらないでしょう。
会社と従業員の関係は「Win-Win」なのです。
従業員の“稼ぐ力”をバージョンアップさせる.必要があり、それは自己啓発によるところもありますが、一方で、スキルアップの場を会社側が提供することも求められます。
それが「リスキリング」になります。