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都立高“校内予備校”開設へ。生徒の経済的格差や教員の激務を解消する狙いも「本末転倒」「逆に教員の負担は増える」との声が多数

東京都の教育委員会が来年度から、高校生の大学進学を支援するため、予備校や学習塾の講師を都立高に招いて講習を実施する、いわゆる“校内予備校”を開設する方針を固めたと報じられている。

報道によると、講習は放課後や土日にくわえ、長期休みにも実施するといい、受験で配点が高い英語や苦手な生徒が多い数学を重点的に指導するとのこと。今後、実施する高校や提携予備校を選定し、新年度予算案に関連経費約1億円を計上する見込みだという。

都立高卒業生の大学進学率だが、過去10年間は51~55%台にとどまっているといい、いっぽうで21年度の大学入学共通テストは、難易度の上昇もあり全30科目のうち7科目の平均点が過去最低を記録したとのこと。都教委としては、予備校が持つ受験ノウハウを生徒に身につけさせ、進学率を上げたい考えのようだ。

当初の実施校はごく限られそう?

今回取沙汰されている“校内予備校”だが、生徒の受講費用は都教委が負担するとのことで、家計の問題で十分な受験対策ができず、大学などへの進学を諦めるという、いわゆる経済的な学力格差といった事態の解消、といった狙いもある模様だ。

子どもの塾や習い事に掛かる費用の助成ということでいえば、大阪市や福岡市など専用のクーポンを交付するなどのスタイルで行っている自治体は、すでに存在するところ。

しかし、そうではなく実際に無料で学べる場を設けるという、今回の都教委による取り組みに関しては、「公平で無駄の少ない施策」「こういう事をするのが行政の役目」などと、おおむね好意的な声が多いようである。

ただ、記事内にも“今後、実施する高校や提携予備校を選定”とあるように、どうやらすべての都立高において、このような施策が行われるわけではなさそうな情勢。

むしろ、新年度予算案に計上されるという“関連経費約1億円”といったところから、今回の事業のスケールを推測してみるに、実施される高校はごくごく限られるのではといった見方もできそうだ。

その点に関しては、SNS上でも心配する意見が少なからずあがっており、「学校によって開講したりしなかったり、レベルがまちまちだったりしたら意味がない」「一部の高校だけとなると、新たな教育格差を生んでしまう」といった声が。

都側としても、流石にいきなりすべての都立高で一斉に始めるというのは、予算の問題もあって現実的ではないところだろうが、来年度以降において取り組みを続けていくにあたって、こういった新たに生まれるかもしれない“格差”の解消も、ひとつの課題となっていきそうである。

教員の負担は「むしろ増える」との見方が多数

いっぽう、今回の“校内予備校”開設に関しては、かねてから指摘されている教員らの激務ぶりも、ひとつの背景なのではといった見方もされているところ。

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近年は教員の“人手不足”も深刻化し、さらなる激務ぶりとなっているという教育現場。そういったことから、特に教員の負担になっているとの指摘も多い部活動に関しては、民間委託を行うところも増えているなど、いわゆるアウトソーシング化も進んでいる状況。今回の施策も同様に、受験対策の指導も外部に任そうという動きではないか、というものだ。

ただ、実際に“校内予備校”が導入された場合に、教員の負担は減るのかというと、決してそうではなく、むしろ生徒の希望集計とか講師の手配などといった準備、さらに実際に始まった後も、校内に教員が一切不在といった状況が許されるわけもなく、結局は付き添う形で残業になるのでは……などと、むしろ負担は増えそうだという見方が多い模様。

さらには、教員の負担軽減ということなら、教科指導以外の“他の仕事”を削減する方向で考えるべきだといった意見も。確かに教員が激務だからといって、本来やるべき仕事をアウトソーシング化するというのは、まさに本末転倒だとも言えなくもないところだ。

都側としては、経済的理由の学歴格差や教員の激務にくわえ、何よりも都立高の学力低下までも一挙に解消できる施策として、大いに期待をしているといったところだろうが、結果的に教員を今まで以上に“他の仕事”へと追いやる格好となり、下手をすれば教員志望者をさらに目減りさせてしまう形に……そんな負のスパイラルに陥ることも、今後は大いに考えられそうだ。

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