実際に、米国では労働組合によるストライキが活発に行われた今年8月には、労働者が仕事に携わらなかった延び日数を示す「労働損失日数」が410万日を超えており、2000年以来23年ぶりの高い数字になったと報道されている。通常は150万日程度であることを考えると、その激しさがわかる。
こうした動きは米国だけではない。市民革命の発祥地であるフランスでは、今年になって政府の年金改革法案に反対して大規模なデモが起きている。年金改革ストライキとして、ごみ収集や交通機関といった社会インフラが大きな影響を受けている。一般企業の従業員も、フランスのアップルでは、iPhone15の新規発売日当日に従業員が賃金の7%増など待遇改善を求めてストライキに入っており、ストライキは労働者の当然の権利だと認識されていることがよくわかる。
ちなみに、労働損失日数を国際比較してみると、次のようになる(データブック 国際労働比較2023より、独立行政法人 労働政策研究・研修機構)。
・米国……155.2万日(2021年)
・韓国……47.2万日(2021年)
・英国……20.6万日(2019年)
・ドイツ……19.5万日(2020年)
・オーストラリア……6.4万日(2019年)
・日本……1万日(2021年)
G7では日本を除いて、どの国も労働者の不満が爆発しつつある?
では、なぜ日本の労働者はストライキをしないのか。そごう・西武の大手企業のストライキは23年振りだったし、大規模なデモ行進も最近はとんと聞かない。
そもそもストライキは経済にとって必要なことなのか、それとも労働生産性を妨げる悪なのか。その点について整理しておく必要があるだろう。
かつて、日本でも高度経済成長時代にはストライキやデモが日常茶飯事だったし、企業も労働者の要求に合わせてきちんと賃金を上げて、労働に対するイノベーションを上げていった。それが失われた20年、30年と呼ばれる低成長、デフレ時代になってからは労働者は何も要求しなくなってしまった。
会社が利益を上げていないのに、自分たちの賃金を上げてもらおうなどというのは虫が良すぎると思ったのかもしれないが、実はここに大きな間違いがあったと言えるかもしれない。とりわけ大企業は自社の労働組合を経営者側に引き入れ、企業が生き残るためには労働者も一緒に低賃金で我慢してもらわなければならない、といった空気を作り出してきた。
その結果は、530兆円もの「内部留保」を蓄積する結果(財務省、法人企業統計調査、2022年7−9月期)になっているのだが、労働者がもっと非正規雇用者も含めて会社側と対峙していれば、日本経済は個人消費が落ち込んで需要不足といった状況にはならなかったのかもしれない。しかも、需要不足を補うために、政府が1,000兆円を超える財政赤字を抱えて、デフレ経済を復活させようとしたことも大きなミスリードだったと言える。