東京都がAIを使ったマッチングアプリを、2024年度から提供する予定だと報じられたことが、大いに話題となっているようだ。
報道によれば、対象は都内在住、在勤、在学の18歳以上で、民間のマッチングアプリと同じく、登録した個人情報や質問への回答内容に基づき、条件や価値観の近い相手を紹介するとのこと。
さらに都のアプリでは、登録時に独身証明と収入証明の提出を要請するといい、利用者全員にオンライン面談をして本人確認を徹底。相手の身分や言動に不安を持った場合は、委託業者の専門スタッフが相談に応じるという。
アプリを自前で作る東京都の本気ぶり
自治体が住民のためにマッチングアプリを提供などと、血税を使ってやることか……といった声も聞こえてきそうな今回の件。
とはいえ、少子化問題への対応が国家的な問題となってすでに久しく、その一環としての“未婚率”の改善は、どの自治体にとっても喫緊の課題。とりわけ東京都といえば、最新の国勢調査の結果によれば、未婚率のワーストを沖縄県などと激しく争っているということで、そんななかで取り組む意義は十分にあるといったところなのだろう。
そういうわけで、すでに他の自治体ではいわゆる結婚支援事業の一環として、例えば「Pairs」といった民間の運営会社と連携協定を結び、独身男女の出逢いの創出を目指す……といったマッチングアプリ活用の動きが各地で出ているよう。
ただ今回の東京都はというと、さすが他の自治体と比べて予算が潤沢なのか、既存のマッチングアプリに乗っかるのではなく、アプリを自前で開発して提供するとのことで、これはかなり珍しい取り組みだということである。
いっぽうで、先に“委託業者の専門スタッフが相談に応じる”とあったように、アプリの運営自体はもちろん役人がやるのではなく、民間企業に委託する模様。
そもそも東京都が実施している結婚支援マッチング事業支援業務に関してだが、その事業プロモーターは、あの旅行代理店大手の「日本旅行」が務めているということ。
さらにその日本旅行が業務実施会社として、婚活やウェディング事業を行う企業「タメニー」を選定したとの話も、すでに昨年9月の時点で伝えられており、今回取沙汰されているマッチングアプリの運営も、このタメニーが実際に手掛ける可能性がどうやら高そうな情勢だ。
コロナ禍を契機に婚活事業に活路か
しかしながら、日本旅行が婚活支援事業を行っているというと、かなり意外な気もするのだが、ここ数年はというと新型コロナウイルスの感染拡大によって、旅行業界全体が壊滅的なダメージを受けたのはご存じの通り。
そんななかで、例えば近畿日本ツーリストは、全国各地の学校に存在するPTAの業務を“代行”するサービスを立ち上げて話題となるなど、本業以外の儲けの種を探すのに躍起となっているところである。
日本旅行の婚活支援事業も、いわばその流れのもののようで、昨年8月には婚活業界大手の「IBJ」と業務提携契約を締結するという動きも。岸田首相がいわゆる“異次元の少子化対策”をぶち上げたのが昨年1月のことで、その絡みで今後の婚活業界の活況が期待大……といったことでの、異業種からの参画となったようである。
ただ旅行業界といえば、コロナ禍の折には危機に陥った同業界を支えるべく、全国旅行支援事業にくわえ、新型コロナワクチンの予約受け付けや接種会場の運営など、国や各自治体から多数の業務を振られることに。
ところがその恩を仇で返すがごとく、各旅行代理店による水増し請求が相次いだのも記憶に新しいところで、現に日本旅行も全国旅行支援事業に関するキャンペーンの事務局運営において、人件費を不正に請求していたことが判明している。
そんな日本旅行に対して、今度は婚活支援事業を大いに任せようとしている東京都。その意図がどこにあるのかは窺い知れないところだが、コロナ関連事業の時のように血税を食い物にされないことを祈るばかりである。
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