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ラーメン店、2023年倒産数は過去最多に。零細規模の個人店から潰れていく反面、上場果たしたチェーン系の多くは好調と緩やかに寡占化が進行中か?

2023年のラーメン店の倒産(負債1,000万円以上)件数は、前年比で114.2%増となる45件となり、2009年以降では2013年の42件を超え、最多を記録したと報じられている。

信用調査会社・東京商工リサーチの調査によれば、倒産したラーメン店の資本金は、「1千万円未満」が40件で、構成比88.8%と最も多く占める結果に。また従業員数別も「5人未満」が39件が最多となるなど、小・零細規模店の倒産が大半を占めるようである。

開業から1年以内に40%近くが廃業?

最近では、一時は出店ラッシュの活況ぶりだった唐揚げ専門にくわえ、コロナ禍においては勝ち組とされた焼肉店などが、揃って過去最高ペースの倒産数などと報じられるなど、苦境が続く飲食産業。

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いずれの業態も、原油価格高騰の影響を受けての食材価格や光熱費の高騰、さらに人手不足やそれによる人件費上昇などのコストアップが、資金繰りに暗い影を落とし、最終的には倒産に至るといったことが、その原因として取沙汰されているのだが、今回のラーメンもほぼ同様の状況といったところ。

また、同じく飲食店全体の倒産急増の原因としては、新型コロナ対策で中小企業向けに実施された実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」が、2023年後半ごろから返済の開始時期を迎えたところが多かったという点も、上記のような倒産ラッシュに繋がっているようだ。

そんななかラーメン業界特有の原因でいえば、過去には“1,000円の壁”が大いに取沙汰されたように、その値付けの設定基準が不透明だという点も、これまで数多く指摘されてきたところ。

そのため商いの小さい零細規模の個人店などは、食材費・人件費などの上昇分を価格に転嫁したくても、客離れが想定以上となれば経営が即行き詰まる可能性もあり、なかなか値上げに踏み切れず、そのまま赤字ばかりが膨らむ事態に……といったケースも多いようである。

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いっぽうで、今回報じられた調査では“負債1,000万円以上”の倒産が対象になっているのだが、それよりも少額の負債で、あえなくパンクしてしまうケースもあり得るわけで、実際のラーメン屋さんの倒産・閉店数はさらに桁違いに多いことも、当然考えられるところ。

そもそもラーメン屋といえば、開業から1年以内に40%近く、また6年以内に85%が廃業するという目安もあるなど、その競争は熾烈を極めるわけだが、それとは裏腹に数ある飲食店の業態のなかでは、開業資金が安く済むなど参入障壁は比較的低いとされるだけに、参入希望者は後を絶たない。

実際ラーメン屋は、毎年全国で3,000店もの新店がオープンしているというもあり、そのことと上記の廃業目安をあわせて考えれば、逆に毎年1,000店以上の店が確実に潰れていっているとも考えられそうなのだ。

「魁力屋」「山岡家」など好調なチェーン系

このように倒産数こそここに来て多いという話はあるものの、依然として新規出店数も多いこともあって、人気としてはまったく衰えていない印象のラーメン。

他に“国民食”“大衆食”といった位置づけで語られる牛丼やハンバーガーなどが、全国にチェーン展開をしている数限られた企業によって牛耳られているのに対し、個人店が大いに幅を利かせているという特徴があるラーメン業界だが、いっぽうで昨年12月には、京都北白川ラーメンの「魁力屋」を各地に展開する株式会社魁力屋が、東証スタンダード市場に上場するという動きも。

初値で公開価格(1,400円)を30%上回る1,822円を付けた魁力屋株は、今では2,700円台まで上昇と、投資家らの注目を大いに集める存在となっているようだ。

さらにこの魁力屋の他では、横浜家系ラーメン「町田商店」などを手掛けるギフトホールディングスが、上場から5年で店舗数を415店舗から745店舗に増やし、今期も営業最高益を見込むほか、また「ラーメン山岡家」を展開する丸千代山岡家も、昨年12月に今期業績予想を大幅に上方修正したことで、株価がストップ高となったことが話題となるなど、いわゆるラーメンチェーン系上場企業は、このところ揃って好調といったところ。

どこで食べても画一的な味ではなく、各々の店舗が知恵を絞った個性ある一杯が味わえるところが魅力であるといえるラーメンだが、その反面で、多くのラーメン店を苦しめる昨今の食材価格の高騰なども、スケールメリットで乗り越えられるチェーン系による“寡占化”も、目下のところ緩やかに進んでいる情勢と言えそうだ。

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