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半導体ブームで日米株価史上最高値…その後の展開は?「バブル」崩壊を含む3つのシナリオ=岩崎博充

暗号通貨で成長し、生成AIでトップ企業に踊り出たエヌビディア

エヌビディアとは、もともとはビデオゲーム映像をより鮮明に作ることができる「グラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)」と呼ばれる画像処理半導体の企業として知られている。半導体の企業と言っても、エヌビディア自身は半導体を作るわけではなく、半導体チップの設計会社であり製造はしない。台湾のTSMC(台湾積体電路製造)などに任せている。

そんなエヌビディアが、最初に大きな成功を収めたのが、このGPUコンピューティングと言う新しい分野のテクノロジーであり、暗号通貨を作る採掘(マイニング)で大きな成果を上げた。同じ半導体メーカーの大手「インテル」や「サムスン」がライバルだが、2023年には両社を抜き半導体売上No.1になると予想されている。複雑な並列処理能力が必要となる生成AIにとってエヌビディアのGPUが不可欠な存在であることに産業界が気付いたわけだ。

実際に、生成AI大手の「チャットGTP」では、エヌビディアの半導体チップが1万個以上使われていると言われている。生成AI以外でも、エヌビディアのGPUはパソコンや電気自動車、ロボットなどにも使用されており、GoogleやApple、Microsoftなどが、エヌビディアのGPUを待っている状態だ。具体的には、分野を問わず顧客サービスで大きく成長している「チャットボット」などのプログラムにも不可欠な存在となっている。

米国大手経済紙『ウォールストリート・ジャーナル』が「エヌビディアにAIの追い風、時価総額1兆ドルへ」という記事を配信したのが2023年5月30日。9ヶ月前のことだが、今や時価総額は今回の決算で瞬間的に「2兆ドル(約300兆円)」を超えて、専門家の予想さえも大きく上回る株価の伸びを見せた。この2月22日に行われた「11−1月期」の決算発表でも、売上高は前年同期比3.7倍の221億300万ドル、純利益は8.7倍の122億8,500万ドル。市場予想をそれぞれ8%、18%も上回った。2024年の2−4月期も、総売上高は前年同期の3倍になると予想している。

エヌビディアが提供するAI関連の半導体は「需要は供給をはるかに上回っている」状態だと、同社のコレット・クレス最高財務責任者(CFO)も述べている。さらに、この3月には次世代製品と言われる新製品が「年次AI開発者会議」で発表される予定で、ライバル会社であるインテルやAMDホールディングスといった高性能半導体企業とも大きな差をつけている(ウォールストリート・ジャーナル「エヌビディアの『AIまつり』まだまだ続く」、2024年2月22日配信)。

日経平均史上最高値を牽引した半導体関連銘柄

一方の日本の株式市場だが、日経平均株価は年初から5,600円も上昇したわけだが、その内訳をみるとエヌビディアの急騰に支えられる形で、日本企業の半導体関連銘柄も上昇。東京エレクトロン、アドバンテスト、ソフトバンクといった半導体関連企業だけで、日経平均を2,200円以上も押し上げたと言われる(※編注:原稿執筆時点2月26日)。いかに、エヌビディア、半導体関連、生成AIといった一連の材料が日経平均株価の史上最高値達成を演出したかがわかるはずだ。

問題は、今後の展開だ。エヌビディアに牽引される形で、今後も日経平均株価は上昇していくのか……、それとも達成感から日本株だけ単独で下落していくのか……、あるいはエヌビディアが失速して日米の株価が揃って下落していくのか……。

様々なシナリオが考えられる。あまりにも急激な日本株の上昇に、株価暴落の予想をする専門家も徐々に増えてきている。例えば、次のようなシナリオをもとに、その可能性を検証してみよう。

Next: 日経平均史上最高値…その後は?想定される3つのシナリオ

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