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日米株価の上昇持続に疑問符。「トランプ会見」への過剰な期待は危うい=馬渕治好

中国政府の意図に反した「元安」が続いている

中国元相場は、今年初まで、下落傾向が続いていました。以前の「元が安くなる局面」は、中国政府が輸出を支援し景気を支えるため、意図的に元を緩やかに安くした状況でした。ところが最近は、中国政府の意図に反した急速な元安だったと言えます。

こうした最近の元安の背景は、資本逃避思惑です。中国の家計や企業が、中国経済や政治情勢に懸念を抱いて、「海外に資産を移そう」という動きが嵩んでいるという説があります。また逆に、中国の企業などが積極的に海外に投資を行なっているという観点もあります。いずれにせよ、「中国から他国に資金が流れる」という思惑が、元を比較的自由に売買できる香港オフショア市場元売りを招き、元安を生じてきました。

そして元が安くなるほど、海外資産を持っている方が利益が出ますので、元安がさらなる資本逃避を招くとの思惑が広がり、それがまた元安を招く、といった、悪循環がとめどなく進むというリスクを生じていました。

中国政府の為替介入も効かず、止まらない中国の資金流出

また、このところビットコイン相場(対米ドル)が上昇していましたが、これは中国の家計や企業が、元から米ドルなどの主要通貨だけではなく、ビットコインにも資金を移しているとの思惑をさらに強めました。

こうした元安が、中国から本格的に資金が逃げてしまう事態を阻止するため、中国政府は元安に歯止めをかけようとしていました。具体的には、中国が保有する外貨準備を使って、外貨売り・元買いの為替介入を行なっていたわけです。

しかしそうした外貨準備を使うことにより、外貨準備高がピーク時の4兆ドルから3兆ドル強まで減少してしまいました。外貨準備がどんどん減っていくと、中国政府が外貨売り介入をしたくても、元手になる外貨が枯渇するとの懸念が広がり、ますます中国元安に歯止めがかからなくなります。

今年に入って人民元が反発した理由と米ドル/円相場

こうした事態から中国元の対米ドル相場は、1ドル7元まで軟化してしまいました。そこで中国政府は、(外貨準備をこれ以上取り崩すことも避けたいため)中国の銀行に働きかけて、投機筋が元売りを行なうために、原資となる元を借り入れるための金利を引き上げさせて、元安を阻止する動きに出ました。

このため、今年に入って元相場が反発したわけです。ここで市場参加者は、中国政府が元相場を押し上げたがったのは、元安と資本投資の悪循環を断ち切るという目的以外に、このまま元が安くなるとトランプ次期米大統領から「元安が中国からの輸出を不当に支援している」との攻撃をされるため、それを避けたかったのではないかと考えました。

ここで、自国通貨が安くなると米国から攻撃されかねないのは、元だけではなく日本円も同様ではないかとの観測が広がり、それが先週の円高・米ドル安を引き起こしたという側面があったと言えましょう。
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※本記事は有料メルマガ『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』2017年1月8日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。本記事で割愛した全文(先週の相場振り返り今週の相場展望ほか)もすぐ読めます。

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馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』(2017年1月8日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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