民営化しやすくする「コンセッション方式」
もう1つのキーワードが「コンセッション方式」です。
「コンセッション」とは、利用料金の徴収を行う公共施設について、施設の「所有権」は公共主体が有したまま、施設の「運営権」を民間事業者に設定する方式です。
コンセッション方式では、高速道路、空港で実施した例があります。空港の場合、空港の土地は自治体の所有のまま、レストランや駐車場等の運営を民間企業が行います。
民間企業のコスト管理から収益を得るノウハウを活用するというものです。
水道管老朽化対策促進の名目で、市町村などが経営する原則は維持しながら民間企業に運営権を売却できる仕組み(コンセッション方式)も盛り込んだのが、今回の水道法改正になります。
平たく言えば、公的機関が商売するよりも、民間企業が商売したほうが儲かるというものです。
ただそれは空港施設や高速道路といった業務には適していても、インフラ整備の中でも国民の命にかかわる水道業務に関して、営利を目的とした民間企業を活用することに、反対派は抵抗しているようです。
政府は、自治体が民間企業の運営をしっかりと管理することを強調していて、不当な水道料金値上げを抑えるために、料金に上限を設けることを決めるとしています。
民間企業を活用することで、地域の雇用を創出することにも繋がるとしています。
水道法改正反対派の意見
反対派の意見では、やはり「不採算事業の切り捨て」を心配する声が大きいようです。営利団体の宿命とも言えることで、企業は“利益の最大化のために動かず、倒産リスクの最小化のために動く”ものです。
道路事業関係者の間には「花の建設、涙の補修」というのがあるそうです。建設事業は華々しいものがありますが、補修事業は地味な作業ですからね。企業にとって見れば「補修は売上ではない」という風潮が、まだあるのではないでしょうか。
民間企業に任せるとコスト削減が期待できるという政府見解にも、反対派は疑問を投げかけています。
競争原理によるコスト削減ということが実際に起こるのでしょうか。水道事業は独占事業と言えます。そもそも競争が行われる事業なのでしょうか。
水道料金の値上げに上限が設けられれば、利益追求のためにサービスの質を落とすのは目に見えていると反対派は指摘します。
自治体は“住民”に目を向けますが、民間団体は“株主”を強く意識するものだという指摘もあります。
なにより水道事業は、民間企業にとって魅力あるものなのでしょうか。公共事業は、談合や癒着は当たり前の世界でもありますからね。